ワクチンでも後進国
予防の最大の武器はいうまでもなくワクチン。周知のとおり日本のワクチン接種率はいまだに数%で、後進国並みだ。英国や米国などでは政府と民間企業が戦略的に開発を行い、この数カ月間で劇的に状況を改善した。
菅首相は就任時からワクチンの重要性を強調し、コロナ対策に取り組むことを表明してきたが、実際は何の成果もなかった。というより成果を出すべく実施された政策はあったのかといいたくなる。2020年度にはコロナ対策と称して国土強靭化に数兆円もの補正予算を組んだが、ワクチン開発や治療薬開発に投じた金額はそれに比べてあまりに小さい。
各国のワクチン接種状況(NHKまとめ5月22日更新)を見ると、米国は約2億8000万回で、英国は約5800万回を達成した。これに対し、日本はまだ約800万回に過ぎない。人口100人当たりでは米国が84回(世界3位)、英国86回(同2位)だが、日本はわずか6回にすぎない。接種率でみると、少なくても1回接種した人は英国55%(接種が完了した人31%)、米国48%、(同38%)、日本は接種完了がわずか2%。米国はバイデン大統領就任後、予定を超えて接種が進み、7月4日の独立記念日までに接種率7割を目標に掲げている。
日本は開発はうまくいっていない上に調達もなかなか進まず、米英が一段落し、ようやく順調に入り始めたところだ。しかし、ワクチン注射の打ち手の不足や予約の混乱など事前の準備はずさんだ。特に医師以外にもワクチンの打ち手を増やすなら、そのための法制度の整備と人材確保の準備にもっと力を注ぐべきだった。分かっていながら、やらない、あるいはやる能力がない。しかも東京五輪が目前に迫っているにもかかわらず、本当に開催するつもりがあるのか疑わしいほどずさんだ(続)
(文=荒木健次/ジャーナリスト)
※月刊『地域と労働運動』(ぶなの木出版) 第249号(5月25日付)より転載、一部加筆
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