コロナ禍の現状では墓標のようにさえ見える国立競技場
GoToトラベルの経過とその後の緊急事態宣言の流れをみてきたが、これで分かることは、この政策が昨年7月22日から12月27日まで約5カ月の長きにわたり続いてきたことだ。
再度言うが、7月22日の全国ベースの感染者数795人は、第1波のピークである720人を上回る。さらにスタートして2週間強で第2波のピーク(1605人)が到来した。10月1日に東京都が加わると徐々に増加し、11月に入ると急増し、政府はねばりにねばって昨年12月末にようやくキャンペーンを停止し、その後2週間弱の1月8日に7957人のピークが到来した。
奪われた多くの命
感染者の増加に遅れて増える傾向にある死亡者数は、11月下旬から急カーブを描き、それ以後は拡大を続け、累計で1万2000人を超えている。この政策と首相の判断の誤りによって奪われずに済んだはずの命が大量に存在することは明白だ。
人の移動によって運ばれ、感染に至るウイルスの特性からして、まだ収束もしていない段階で税金を使って積極的に全国民を対象にして移動(旅行)させるというのは単純に考えてやってはならない政策だ。まだ収束も確認できない状況下で人の移動奨励策を5カ月以上も続けた政府は世界にない。その間に多額の税金と労力が投じられ、命が奪われた。
そのような政策の推進に異常なほど執着する最高権力者の首相が、専門家や野党に何度指摘されても方針を変えず、変えさせるために専門家たちが多大なエネルギーを払うなどということが許されていいはずがない。さらに、菅首相が態度を変えたのは、人命ではなく、内閣支持率だったことは破廉恥の極みである。
経済とコロナ対策を両立させることは、経済を優先することでは絶対に達成できない。それは結局経済活動も破壊する。コロナと経済を両立させるには、コロナを止めるしかない。出入国の水際対策を厳しくやり、PCR検査を充実させ、無症状の感染者を1人でも多く見つけ、保護・隔離し、非感染者が経済・社会活動に専念できる体制を作ったときにのみ経済は回っていく。特に日本は貿易依存度が低く、内需の厚い国であり、それがやりやすい国なのだ。
もし、GoToキャンペーンに使うエネルギーを予防・診断・治療に使っていれば、今とはまったく違う世界になっていたはずだ。第3波の7957人という第1波の10倍以上の山を築いたのは、間違いなく菅首相の責任である。GoToキャンペーンの推進は予防・診断・治療という医療の基本を脇から妨害し、破壊する行為以外の何ものでもなかった。