経腸栄養によって命をつなぐ患者や現場の医師からの問題提起、厚労省はどうこたえるのか?

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幅のある新規格品への移行をめぐる検証

 日本では、2000年に厚労省から「医療事故を防止するための医療用具に関する基準の制定等について」が通達され、経腸栄養ラインと輸液ラインのコネクタが物理的に誤接続できないような規格品が採用されており、これまで誤接続による重大事故は起きていない。

 今回一律導入が決められた経腸栄養の国際規格のコネクタは、誤接続を防ぐ観点からより複雑化し、備品装着が多いこと、装着時や注入時の手指に対する負担が大きいこと、経済負担が増えることなど、医療現場、介護施設、在宅医療の現場から多くの意見が多く寄せられた。

 厚労省の決定を是認する形で日本臨床栄養代謝学会が主導で行った検証「ミキサー食における新誤接続防止コネクタ(ISO80369-3)のユーザビリティー評価 ―ヒトによる官能評価試験―」(https://onlinejournal.jspen.or.jp/User/articles/58)では国際規格品においてミキサー食の注入は現行コネクタと変わりなく可能であると判断した。

 しかし、この検証は小児病院3施設それぞれにおいてミキサー食の胃ろう注入を行っている患児の家族3名,看護師3名の計6名に対しのみ行われたもので規模が小さい。一部の医師からは「内径が細い既存品が比較検証に使用されており、公平でないのではないか」との指摘がある。
 
 一方、日本重症心身障害学会では新規コネクタプロジェクトチームを設置し、比較検証を40名、アンケート調査が29施設(注入栄養者1194名)、1082名の看護師を対象としたより大規模な検証などを行っている。比較試験では新規コネクタでの総注入所要時間の延長と負担感の増大を認め、1082名へのアンケート調査では導入前において看護師の50%に手首痛を認め、手首痛の受診歴も10%あり、新規コネクタへの変更により備品装着や捻じる操作が加わることで手首への負担増加が懸念された。さらにコネクタ部分の汚染による感染症への懸念、付属品の管理の煩雑さや費用など解決されるべき問題が多いこと明らかとなった。(http://www.js-smid.org/docs/survival-of-current-connectors_v02.pdf)

 こうした結果を受け、2020年12月には「日本重症心身障害学会」、「日本重症心身障害福祉協会」、「全国重症心身障害児(者)を守る会」の連名で厚労大臣あてに「経腸栄養分野での既存広口タイプ誤接続防止コネクタの存続に関する要望書」を提出し、厚労省は当初、新規格製品の導入から2年間となる2021年11月末までを旧規格品の出荷期限としていたが、この期限を2022年11月末まで延長する旨を通知している。

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