デリケートゾーン・ケアから見えてくる次世代の女性医療の在り方

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日本はデリケートゾーンケアの後進国!?

 デリケートゾーンのケアについて、吉形医師は日本の後進性を感じることが多いという。
「諸外国ではスーパーやドラッグストアに普通にデリケートゾーンのケア用品がありますし、母親が子供に入浴の仕方を教えるときに外陰部の洗い方を教える習慣があります。日本人は“秘めたるもの”としてなぜか教えない。本来であれば保健の時間などにきちんとと教えるべきだと思います」と教育の不備を指摘する。

 医療界からのアプローチにも大きな違いがあるという。
「海外と日本では女性医療系の学会の様相が全く違います。国際学会では展示物や企業ブースで腟やデリケートゾーン関係、性交渉をスムーズにするためのケアなどの展示が非常に多いのですが日本ではほとんどありません。産婦人科系の学会ではどうしても腫瘍や周産期、生殖補助(不妊治療)などに関するものが中心で、この分野はまだまだマイナー。医療側のアプローチがもっとあってもいい分野です」と吉形医師。

 実は2014年に北米閉経学会(NAMS)と国際女性性機能学会議(ISSWSH)などによって GSMという新しい概念が提唱されている。日本語では「閉経関連泌尿生殖器症候群」と訳され、閉経に伴うエストロゲン低下によって外陰腟萎縮症や萎縮性腟炎、尿失禁など泌尿生殖器系に生じる多くの症状を一つの症候群としてとらえていこうという動きだ。こうした症候群は更年期によくあらわれる「かゆみ」「加齢臭」「乾燥」「性交疼痛」などの不快な症状と関係しており、多くの女性の悩みとなっているためだ。

 日本でも遅まきながら、こうした分野に関心を持つ医療者が現れてきた。
「昨年GSM研究会が発足しました。性交関連症状も含めきちんと学問的に定義づけ、学会で問題視し産婦人科と泌尿器科が連携していこうという動きです。このGSMの概念と同時期に日本に入ってきたのが腟レーザー治療です。いままで主に美容の分野で使われていましたが、デリケートゾーンの問題を大きく改善することが期待されています。萎縮性腟炎、性交痛、泌尿器障害などの症状は腟粘膜を再生することで治療効果が現れます。腟のゆるみが締まるという効果もあります」と説明する吉形医師も研究会の一人だ。

女性ホルモンの変化で引き起こされる疾患と向き合う

 吉形医師にとってデリケートゾーンのケアは一つの扉に過ぎない。腟の㏗値を維持の背後には女性ホルモンのエストロゲンの影響やその他の婦人科疾患、さらに多くの生活習慣病まで視野に入ってくる。

 2015年の北米閉経学会(NAMS)では、エストロゲンと同様の働きをするエクオールが各種生活習慣病リスクの低減に関与することを示した研究を発表し、同年の学会賞を受賞している。

「最近、腟内フローラは不妊治療のトピックスになっていますし、膣内フローラの乱れは性感染症リスクや子宮頸がん、卵巣がんほか複数のがんの発症と関係があるとの研究報告もあります。女性の健康全般に大きくかかわるのがエストロゲンです。まずはエストロゲンが減ったら腟内で乳酸がつくられなくなるということを知ってほしいですし、日常的な関心としてデリケートゾーンのケアはもっともっと注目されていいと思います」(吉形医師)

 吉形医師は今後、エストロゲンやエクオールなどの研究をつづけながら、セルフケアで腟内フローラを健全に保つ方策がないか。あるいは閉経前と閉経後ではケアの仕方がどのように変わるべきかなどなど、さらに研究と臨床症例を積み上げていきたいという。

「妊娠/不妊」「月経」「更年期」「産後ケア」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」などを対象に女性の健康課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」は、2025年には世界で5兆円規模の市場になると予想されている(フロスト&サリバンの調査レポート)。その中で日本での遅れが目立つ。

 吉形医師のような身近な臨床や生活の場への新しい視点、地道な研究成果によってこうした道も切り拓かれていくものなのだろう。
(文=編集部)

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吉形玲美 (よしかた・れみ)
浜松町ハマサイトクリニック 婦人科医師
医療法人社団ミッドタウンクリニック 特別顧問(女性医療研究主幹)
東京女子医科大学付属病院 産科婦人科非常勤講師

東京女子医科大学医学部卒業。同大学産婦人科の臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。

日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医・同学会代議員、日本更年期と加齢のヘルスケア学会幹事
日本抗加齢医学学会評議員、日本女性栄養代謝学会幹事

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