非科学的な報道と限られた専門家たちの方針で歪められたコロナ対策

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

限られた分野の「専門家」の判断から置き去りにされた被害

 こうした連日連夜の報道による影響もさることながら、もう一つの要因は「専門家」を活用した一面的な対策を〝正しい解決策”として国民に信じ込ませたことにあるのではないかと思う。

 一般人にとって「専門家」というのは、正解を導き出せる人という認識だ。専門家がその専門分野において「クロ」と言えば、「クロ」が正解なのだ。だから私たちは専門家会議の見解として打ち出された政府の方針である「8割減の自粛」をし「ステイホーム」に徹した。こうした行動は、今のところ、確かに感染者数を減らし、死亡率を抑えた。

 しかしこれらは「感染症」という専門分野から見た〝目に見える効果”だ。感染症対策の専門家と政府の人間にとっての〝成功”であり、世界の他の国々と比べて胸を張れる成果を出したことで、それぞれの責任を果たしたことになる。

 が、その〝成功”の裏には〝目に見えない被害”が山のように隠れている。数字には表れない「命の危機」は、孤独、失望、ストレス、虐待、恐怖といった心の問題と、膨らむ経済難民によって、今後ますます高まっていく。

〝目に見えない被害”は想定できないものではなかった。であれば、もっと多面的な解決策を模索できなかったか。感染症対策の専門家は、感染者数を抑えるための責任を果たせばよい。それが「ステイホーム」だったが、この「ステイホーム」が及ぼすさまざまなダメージを回避するための他分野の専門家たちの〝視点”も並行して必要だった。

 同じものを違う視点で見るということが、全体を把握する上でとても重要だということは言うまでもない。視点の違うさまざまな専門家が協議しなければ、〝正解”は歪んでしまう。

国民の行動様式の無視と思考停止した自粛

 たとえば「ステイホーム」を要請するにしても、TPO(時、場所、場合)に応じた「ステイホーム」のカスタマイズがあるべきだ。政府や専門家会議の方針はマクロなもので、国民一人一人のミクロな行動様式は、個々人が自分の環境や生活様式に沿った「ステイホームのあり方」を判断し、実行すればよいではないか。それができる知識と知性はあるはずだ。一日中、部屋に閉じこもっていることが〝正解”ではなく、朝の散歩も、買い物も、外食も、人との面談も、「3つの密」を避けることが可能であれば行ってよいはず。

 しかし実際は、一日中部屋に閉じこもっていることに何の疑問も抱かず、行政が許可するまで外出は禁止!という暗黙の了解が蔓延していった。何のために「自粛」が必要なのかという目的を見失い、ただひたすら「自粛」を履行することに徹し、同じことを他人に強要し、そうして動きが止まった町はまるで思考停止したかのように見えた。

 今後もウイルスは私たちを悩ませる。感染者が出るのはあたり前の世の中になる。8割は軽症か無症状だというが、はたしてそれらの感染者をくまなく検査して隔離したり、感染者数が増える度に「自粛」の要請が繰り返されるのだろうか。できるだけウイルスから逃れようという戦い方の下で、人々の恐怖は募り(ついでに言えば、恐怖は免疫力を下げる)、あたり前の経済社会や人々の暮らしにもたらす犠牲は計り知れない。

空虚で滑稽な「ウィズ・コロナ」は本当に新しい生活様式か!?

 そして5月に入って提言された「ウィズ・コロナ」の世の中における「新しい生活様式」は、少し滑稽だ。人に近寄るな、正面に立つな、部屋の中でも常にマスクをつけろ、会話は控えてできるだけ小声で、無駄な長居はするな、といった実践例を見ると、なんだか心寒い思いがする。いつも人を疑って行動しましょう、ということになる。
人はモノではない。目に見える対策と効果ばかりが検証されて、そこで失われる目に見えない人と人の繋がり、ぬくもり、共感、信頼、安心、楽しさ、豊かさ、幸せ……といった多くの大切なものが、ないがしろにされてはいないだろうか。この目に見えない深いダメージを、データに算出できない大きな被害を、いつか誰かが証明するのだろうか。

コロナで改めて気づく健康管理と免疫力の大切さ

 こうした奇妙な世の中に移行しないように、私たちができることは、自分を守るための健康管理だ。体に無用な炎症を起こさないように、良い生活習慣を励行することだ。人が生まれながらに持つ「免疫力」を、いつもしっかり整えておくことだ。

 もちろんワクチンや治療薬の登場は大きな救いだが、いつまた新手のウイルスがやって来ないとも限らない。他に頼らず、自分の体に自信を持てるような生活をつくっていくことが、ウィズ・コロナ時代を生き抜く確かな術だと思う。

 では、いかにすればより良い健康をつくれるのか?

 ホリスティック医学の大家、帯津良一氏の言葉を借りれば、それは自分の心身が心地よいと感じることをすることに尽きる。誰にも当てはまる「正しい生活習慣」はない。巷にある〝健康法”で合いそうなものを選んで実践してみて、心地よければそれを続ける。肝心なことは、「続ける」という点だ。

 もう一つ、免疫学の大家、安保徹氏によれば「自然の摂理に反した生き方をしていれば、免疫力が落ちてしまう」ということになる。こうした考え方をベースに自分の生活に配慮した上で、私はビタミン・ミネラル類や漢方薬を補給して予防している。個々人で状況は異なると思うが、参考までに紹介しておく。

■ウイルスの体内への侵入に対してバリア機能をはたしている鼻やのどの粘膜のためにビタミンAやオメガ3脂肪酸(私は亜麻仁油)を補給。
■「自然免疫」を下げないために、免疫細胞の6~7割が集まっている腸の健康を考えて、ビフィズス菌や乳酸菌、食物繊維やオリゴ糖を補給。
■「自然免疫」を下げないために、マルチビタミン・ミネラル、ビタミンD3、ビタミンCをサプリメントで補給。
■外出時には、抗ウイルス効果の高いEGCG(エピガロカテキンガレート)を含む煎茶を持ち歩き、帰宅時には、ウイルス予防に定評のある板藍根(バンランコン)のお茶を飲む。
■病邪に対抗する「気」の働きを補う補気剤「補中益気湯」を1日1~2回、服用する。漢方薬の上薬なので、養生薬として毎日、飲用できる。

 のびのびと人が交われる健やかな日常が取り戻せるよう、願うばかりである。

後藤典子(ごとう・のりこ)

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会理事長、農医連携ユニット理事
。同志社大学文学部卒業後、編集プロダクションを経てジャーナリストに。政治・経済評論をテーマにした取材・執筆を主軸としてきたが、サプリメントの取材をきっかけに市場の歪んだ情報の蔓延に義憤を感じ、生活者のための公正中立な情報の必要性を痛感。2001年、NPO日本サプリメント協会を発足、中立な情報機関として活動を始める。書籍の発刊や、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど、マスメディアにおいて執筆・評論・コメントを行うとともに、生活者や企業を対象とした講演活動を通じて、ヘルス・プロモーションの啓発に努める。現在、自己健康管理サイト「ヘルスデザイン」をプロデュースするとともに、
農と医をつないで健康と食の問題を検証するプロジェクト「農医連携ユニット」に関わるとともに、
「日本サプリメント協会」を通して生活者の健康リテラシーを向上させるための情報活動を行っている。

後藤典子の記事一覧

後藤典子
バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子