作戦変更の提案
これまで見てきたように、ミッドウェー作戦失敗の原因として挙げられた主要項目それぞれにおいて、COVID-19に対する作戦に問題点あることが判った。そこで、政府の柔軟性を期待して、次のような作戦変更を提案する。
(1)西浦・北大教授のデータを使用して、毎日、何%くらいの「接触者削減」が達成できたかを地域別(都道府県別)に計算して公表することだ。毎日の感染者数を逆挿入すれば計算できるはずだ。非常事態宣言を出してほぼ2週間が過ぎた。その効果が表れ始める時期だ。それぞれの地域住民の、翌日からの行動様式変更への指標とすることができるだろう。
(2)特措法担当大臣を経済再生担当大臣から厚労大臣に変更することだ。少なくとも、両大臣を特措法担当大臣とすることだ。
安倍首相は、生活前線だけでなく、医療前線の状況を正確に把握することだ。そうしなければ的確な作戦決定が行えないだろう。 “アベノマスク”の配布や自宅でくつろぐ動画のSNSへの投稿など、的確と思えない行動が見られる理由は医療前線の状況を正確に把握していないからだろう。
重症コロナ患者に対する「診療報酬の倍増」という突然の発言(4月17日記者会見)も、安倍首相の単なる思い付きだろう。医療崩壊回避作戦での位置づけがまったく不明、倍増が的確かどうかも不明である。前線でコロナ患者と必死に戦っている医療従事者に必要なのは、リスペクトの心である。安倍首相に求めても無理か。
(3)PCR検査を国民の行動様式変更のために使うことだ。
クルーズ船でのPCR検査の結果を、残念ながら空港での水際作戦に利用できず、感染源(healthy carrier健康運び人)を国内へ広げてしまった。その結果が市中感染、すなわち感染経路不明感染者の増加だ。
この様な状況下では、国民の行動様式変更のためにPCR検査を用いることだ。例えば、東京のターミナルで、帰宅時の通行人をat randomに、3,000~5,000人のPCR検査をすることだ。ウオークスルー方式と呼べるだろう。診断確定のための行政検査とは別に、研究のための検査だ。0.2%位が陽性になるのではないだろうか。これは通勤電車内での感染の可能性(感染する、感染させる可能性)についてのデータとなり得るだろう。
国民の行動様式変更のために重要なことは、自身が感染したくないと思うだけでなく、自身が感染源になっているかもしれないと思えるかどうかだろう。
COVID-19との闘いに負ける前に、医療崩壊の起きる前に、重症化抑制の薬剤(新兵器)の入手できることを、ただただ祈るばかりだ。第三次世界大戦の新兵器は、原爆・細菌兵器・化学兵器と異なり、人類を生かすための兵器だ。(文=平岡諦)
平岡諦(ひらおか・あきら)
大阪大学医学部卒業。
元・血液内科医、憲法研究家、
NPO医療制度研究会・理事、
NPO筋痛性脳脊髄炎の会・理事
※医療バナンス学会発行「MRIC」2020年5月4日より抜粋(http://medg.jp/mt/)
全文は(http://medg.jp/mt/?p=9577)