重症のアトピーが心疾患の発症リスクに(depositphotos.com)
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)のSinead Langan氏らの研究チームは、重症のアトピー性皮膚炎(湿疹)の患者は、心筋梗塞、脳卒中、不整脈などの心血管疾患を発症するリスクが高いとする研究成果を『BMJ』5月23日オンライン版に発表した。
アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥、かゆみ、発疹を伴い、喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーを誘引する炎症性皮膚疾患であるため、罹患すればQOL(生活の質)の低下につながる重篤な慢性疾患だ。
重症のアトピー性皮膚炎は心疾患による死亡リスクが40~50%も高い
Langan氏らは、英国家庭医の診療記録を収めたデータベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録したアトピー性皮膚炎に罹患した18歳以上の成人38万7439人(年齢中央値43歳、女性66%)とアトピー性皮膚炎を罹患していない152万8477人を対象に心血管疾患の発症リスクを比較した。アトピー性皮膚炎の患者は、軽度、中等度、重度に分類し、中央値で5年間追跡した。
その結果、重症のアトピー性皮膚炎の患者は、罹患していない対照群よりも脳卒中リスクが20%、心不全リスクが70%高く、不安定狭心症、心筋梗塞、心房細動、心疾患による死亡のリスクが40~50%高かった。体重、喫煙、アルコール摂取などの因子を調整してもリスクに変動はなかった。
英ロンドン大学衛生熱帯医学大学院(LSHTM)のSinead Langan氏が率いた研究チームは「この研究は観察研究なので、アトピー性皮膚炎が心疾患リスクを高める原因を明らにしてはいない。だが、被験者数が大規模なため、関連性は否定できない。これらの患者を対象とした心血管疾患の予防対策を検討しなければならない」と指摘する。
英カーディフ大学のJohn Ingram氏は「重症のアトピー性皮膚炎をコントロールするためには、高価な最新の生物学的製剤を使用する価値がある。生物学的製剤が心疾患リスクを低減できるかどうかが試金石になるだろう」と強調している。