インタビュー「脳卒中後遺症の機能回復・再発予防専門のジム」後編:株式会社P3代表・中村尚人(理学療法士)

脳卒中後遺症の「リハジム」のコンセプトとは?保険適応外だが富裕層のための施設ではない

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正しい方法、知識を知ってもらうための努力

 日本における脳卒中や脳梗塞への理解度は、驚くほど低い。発症後の機能回復、再発予防のトレーニングに対しても、それは同じ。様々な情報が飛び交い、利用者の理解をより難しくしている。

 既存のリハビリ法に対して中村氏の考えるような新しい方法を浸透させるには「とにかく知ってもらうしかない」と話すが、知ってもらうことへのハードルも高い。中村氏は各病院にチラシを配り、ソーシャルワーカーやケアマネージャーを対象にした見学会や営業活動にも力を入れる。

 だが、その思いとは裏腹に、現状では「リハジム」のような保険外の施設に足を運ぶ人、そこを薦める人の数は、決して多いとは言えない。

 「なぜ来ないかというと、いまの既存のリハビリのやり方に問題意識を持っている人が少ないんです」と中村氏。「本当の知識を知っている人がソーシャルワーカーやケアマネージャーはもちろん、利用者にもいない。だから、僕たちのやっていることが何なのか、なかなか理解されないんです。内輪の人間だけが、既存のやり方がどれだけ意味のないことか気づいている。理学療法士という資格を持っている人間たちはみんな、危機感を持っているんです」とため息をつく。

 既存のリハビリセンターでの指導に対しても批判的だ。

 「ヤバいです。ほとんど麻痺の回復には意味がありません。。やらなくてもいいようなことをやってお金をとっているんです。『ベットに寝てください、足の曲げ伸ばしをします』なんて言ったって、何の効果もないんです。自分で動かない限り脳の再生はあり得ないんです」と語気を強める。

 そして「でもそれを白衣の人がやっていると、家族の方たちも『先生、ありがとうございます』ってなるんです。『こんな無駄なものに保険料使うな』って思うんです。エビデンスを知らないから、患者の側も『それでいい』と思っている現状があります。それを改善したいんです」と訴える。

 だからこそ情報発信は大切な作業になる。

 「この業界で、医療神話のようなものを崩すのは大変です。ある種、ジャーナリストみたいな感覚で、内輪のことも暴露しながらやっていかなければいけない。でも、やりすぎると反感を買って、利用者を回してもらえなくなる。利用者を紹介してくれるのは、ソーシャルワーカーやケアマネたち。この人たちにまず理解してもらわないといけないんです。そこをいま悩んでいます」と胸の内を明かした。

 施設の名称は「リハビリセンター」ではなく「リハジム」と銘打った。中村氏はこれについて「リハビリセンターという名称にはしたくなかったんです。イメージとしては、あれと同じと思われることに抵抗があったんです。やっぱりもっと積極的に自分の未来を変えたいという人たちに来て欲しくて」とその理由について語る。

 だが、この名称がソーシャルワーカーやケアマネを遠ざける理由にもなっている。

 「ソーシャルワーカーもケアマネもまだまだ『リハジム』のような場所には抵抗を持っている。何者かわからないからというのが大きいでしょう。自分たちのほうも実績を作っていかないといけない。知ってもらう努力をしないといけない」

ターゲットは富裕層ではない

 「リハジム」で行われるような保険外のサービスを受けることについて、日本ではまだまだ金銭面の問題からハードルを感じる人も多い。富裕層向けのサービスと誤解を持ちがちで、それは利用者だけでなく、ソーシャルワーカーやケアマネージャーの側も利用者と同じ認識を持ち、利用者を紹介する上でのハードルのひとつになっている。

 だが、「リハジム」の料金設定は保険外とはいえ驚くほど安い。

 「うちの場合は時間制限がなくて、1日4500円で設定してあるんです」と中村氏。「会員さんになると、月額1万2000円を別に払うことになりますけど、その1万2000円を担保として入れてもらい、通えば通うほどさらに料金が安くなるシステムにしてあるんです。最高2000円まで下がります。1日営業時間内であれば何時間訓練してもです。決して富裕層だけを狙ってやっているわけではないんです。『誰にでも来て欲しい』という気持ちがあって、そういう料金設定にしているんです」

 ここでのトレーニングの成果についても「1年経つと必ず良くなっている」と自信を見せる。

 「もちろんです。回復するには時間が大切なんです。そこを開放しているんです。週に1回を1年やるのと週に3回を1年やるのとでは結果も全然違ってきます。内容的にも効果があることしかやっていない。だからこそぜひ週3回来て欲しいと思っています。僕らも長期的に利用者に関わっていきたいんです」と中村氏。

 「体への学習効果も基本週3です。筋トレも週1だと効果ないですよね。2日空けると効果はゼロです。学習作業で脳の神経回路を作らなければいけない。それをここで効率的に取り組んでもらえる。その環境は整えてあるんです」

 将来的なビジョンについても夢は広がる。

 「いまは脳卒中のリハビリだけど、これからは神経難病や大腿骨頚部骨折のリハジムとかもやっていきたいです。でも、ひとまずは脳卒中をなんとかしたいです。一番いいのは、このジムの下に脳外科の先生なんかのクリニックが入ってくれるといいなと思うんです。ジムで何か起こると、先生が上がってきてくれる。今後はここだけでなく、日本中にそういう施設が増えていくと思います。いまはヨガのスタジオでもお医者さんが経営していたりして、そこに内科クリニックが併設され、その下にアスレチックジムがあるところもある。新しい価値観の若い先生たちが増え、リハビリの在り方、価値観もどんどん変化していくと思います」と話してくれた。
(取材・文:名鹿祥史)

※このインタビュー内の金額などは、インタビュー時点のものであり、変更になる可能性があります。

中村尚人(なかむら・なおと)
株式会社P3 代表取締役
理学療法士取得後、慈恵医科大学付属第三病院、柏病院、永生会クリニック、さらに老人保健施設や訪問リハビリでケアを経験後、ポールスターピラティスやヨガアライアンスを修了。2010年八王子市にヨガ・ピラティスのスタジオTAKT EIGHTをオープン。その後、予防運動研究会、予防医学を実現する㈱P3などを設立。14年には、一般社団法人日本ヘルスファウンデーション協会、18年にはリハジムを開設。
著書は『ヨガの解剖学』『50歳からはじめるヨガ&ピラティスの教科書』『図解YOGAアナトミー:筋骨格編』『実年齢より10歳若返るシンプルな7つの方法』など多数。

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