蚊に刺されやすいのは「中間所得層」だった! 世帯収入の差との因果関係は?

この記事のキーワード : 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

どのような人が蚊に刺されやすいのか?

 

 上記の研究は、米国のメリーランド州ボルチモア市で行われたものなので、気候や生態系、住環境も異なる日本にそのまま置き換えるには無理があるかもしれない。
 
 とは言うものの、蚊に関する俗説は実に多い。「蚊に刺されやすいのは太っているからだ」とか「O型だから刺されやすい」とか……。

 しかし蚊は、「伝染病の媒介者」という厄介な一面もある――。日本脳炎、デング熱、ジカ熱、マラリアなどの伝染病を媒介し、毎年100万人以上の人命を奪っている。特にウイルスに感染しているペットの血を吸った蚊に刺されて日本脳炎を発症すると致死率は40%にも上るため、ペットからの感染も怖い。蚊を媒介とした感染症の被害を防ぐためには「蚊に襲われない対策」を考えるのが先決だ。

 「NHK生活情報ブログ」に掲載されている「“蚊”に刺されやすいの、誰だ!?」(2017年10月5日)を見よう。

 そこで紹介されているのが「蚊に刺され指数」だ(アース製薬株式会社2017年4月26日のプレスリリースより)。血液型、性別、年齢などの情報を入力し、「肌の色」「汗をかきやすいか」「早食いか」など16の質問に答えると、「刺されやすさ」を点数で表示する。しかし、あくまでも「目安」だということを言い添えておく。

 そして同ブログでは、半世紀以上にわたって蚊を研究し、学術書『蚊』の著作もある池庄司敏明氏(元東大教授)が、「蚊に刺されやすい人」を次のように分析する。

 第1に、体が大きい人、太っている人は、蚊が見やすく、体臭も多いので、狙われやすい。

 第2に、蚊は、人の吐く息をキャッチするので、酒を飲んだ人は刺されやすい。

 蚊は、口の辺りにある2本組の小顎髭(こあごひげ)にあるセンサーを使って、人の吐く息に含まれる炭酸ガス(二酸化炭素)をかぎ分ける。大気中の炭酸ガス濃度は0.035%、人の吐く息はおよそ4.5%。蚊は、わずか0.01%の濃度の変化を察知し、無風状態で呼気が拡散した5m先でも感知できる。

 そのため妊婦は、体温が通常の人よりも平均で約1.26℃高く、しかも炭酸ガスの排気量が約21%増加するため、蚊に刺されやすい。また、酒を飲むと、アルコールが体内で消化・分解される時、大量の炭酸ガスが口から排出されるため、蚊が寄ってきやすい。つまり、酒を飲んだ人は刺されやすい。

 第3に、体温の高い人は、刺されやすい。

 蚊の触角にある産毛のようなセンサー(およそ2000本)は、人間の嗅覚より約10倍も高感度なため、わずか0.05℃の温度変化でも感知できる。

 第4に、蚊は黒い色を好み、白い色を嫌う。

 蚊は、人間のように色を鋭敏に認識できないが、人間に見えない紫外線領域の光の波長を見分けられる。黒、青、赤、褐色、緑、黄、白のシャツを着て、蚊の飛来数を比較した海外の実験によると、黒が最もよく蚊を誘引し、白が最も少なかった。黒は太陽の熱を吸収しやすく、黒い服を着ると体温が上がりやすい。日焼けした後は、刺されやすくなる。

 第5に、蚊は、汗の匂いが大好き。

 2000本のセンサーは、汗の匂いの原因になる乳酸、脂肪酸、アンモニアをかぎ分けるので、太っている人や汗かきの人は、刺されやすい。また、足の裏は、汗腺が密集し、常在菌が多い。特に夏は匂いが強くなるため、足は攻撃されやすい。

 さて、先にも記した俗説「O型の人」は、どうだろう? 千葉県八千代市にある害虫防除技術研究所の白井良和所長によると、血液型の異なる64人の刺されやすさを調べた結果、多い順からO型>B型>AB型>A型だったとのこと。

 皮膚は、血液型に由来する特定の物質を分泌しているので、蚊を誘引していると考えられるが、刺されやすさには、他の複数の要因が絡んでいる可能性がある。

蚊に刺されない対策は、コレ!

 蚊の活動が最も盛んになる気温は、25~30℃。初夏から真夏に向かう朝晩は、特に注意したい。汗はよく拭き、よく流して、体を清潔にしよう。特に汗腺や常在菌が多い足の裏を清潔にすること。蚊がいる場所に出かける直前に、足を洗浄・消毒すれば、刺されにくい。石鹸で足の指の間を洗っても効果がある。

 また、黒っぽい服装を避け、白や明るい色調を選び、ゆったりめの服を着る。酒を飲んで外をふらつかない。香水の匂いに気をつける。運動後は風通しのいい場所で休憩する。

 また、足、手、首筋に「ハッカ油」をつければ、その独特の香りが、蚊を寄せ付けにくくする(たとえば、精製水90ml、消毒用アルコール10ml、ハッカ油20~30滴)。揮発しやすく、効果が続く時間が短いので、スプレーを持ち歩いてこまめに使うのがポイント。

 そして、市販の蚊よけ剤を賢く使おう。「ハッカ油」のほか、「シトロネラ」「ユーカリ」「レモングラス」などのハーブ、「ヒノキ油」などもいいだろう。これらは効果の持続時間が短めなので、こまめに使いたい。昔ながらの「蚊取り線香」もいい。また、「塗り薬」を皮膚に塗ると、塗った部分をヒトだと分からないように撹乱する効果がある。持続時間が4~6時間と長いが、効き目のある範囲が狭いので、手でよく塗り伸ばす。必ず使用上の注意をよく読んで使いたい。
 
 さて、斯斯然々(カクカクシカジカ)。江戸時代中期の寛政のご時世、「世の中に蚊ほどうるさきものはなし 文武ぶんぶといひて 夜もねられず」という狂歌が流行る。老中の松平定信が「寛政の改革」を断行し、文武(学問と武芸)を執拗なまでに奨励したので、民衆は「やかましい! かっこつけるな!」と皮肉ったものだ。

 当世ならさしずめ「世の中に蚊ほどうるさきものはなし かけそば(加計)、もりそば(森友)といひて 夜もねられず」と皮肉りたいところ。
(文=編集部)

バナー1b.jpeg
HIVも予防できる 知っておくべき性感染症の検査と治療&予防法
世界的に増加する性感染症の実態 後編 あおぞらクリニック新橋院内田千秋院長

前編『コロナだけじゃない。世界中で毎年新たに3億7000万人超の性感染症』

毎年世界中で3億7000万人超の感染者があると言われる性感染症。しかも増加の傾向にある。性感染症専門のクリニックとしてその予防、検査、治療に取り組む内田千秋院長にお話を伺った。

nobiletin_amino_plus_bannar_300.jpg
Doctors marche アンダカシー
Doctors marche

あおぞらクリニック新橋院院長。1967年、大阪市…

内田千秋

(医)スターセルアライアンス スタークリニック …

竹島昌栄

ジャーナリスト、一般社団法人日本サプリメント協会…

後藤典子