渇きの先回り補給を
こうして「盲検下での補給の差異」→「自然な渇きへの配慮(=排除)」→「2時間後の全力走」という手順で比較分析が実施され、次のような結果が導かれた。
細かい配慮からか、①②群の選手とも、実験中に「喉の渇き」自体は感じなかったと証言した。にもかかわらず、①の被脱水群に比べた場合、②の脱水群ではペダルを漕ぐスピードや出力の低下が読み取れた。
また一方、環境温度の影響を受けにくい深部体温も、①群のほうが②群よりも明らかに高かった。こうした結果に対して、Kavouras氏は次のような見解を示している。
「運動中に十分な量の水を飲んで、適切な水分量を維持することが、いかなる影響を及ぼすか。それが最良のパフォーマンスを発揮するため、そして深部体温の調整にとって不可欠であることが今回の研究で示唆された」
もちろん、運動時の発汗量に個人差があることは言うまでもない。ゆえに、各自のベスト状態を引き出すためには「個々のアスリートが自らに適した水分補給の方法を決める必要がある」と、同大学のプレス資料上でも研究陣は補足している。
今回の被験対象者が7名とやや小規模であった点についても、Kavouras氏は「(7名といえども)有意差を導くための統計学的な検出力は十分だったと考えている」と説明している。
さて、梅雨を迎える前から「夏日」に見舞われる日も少なくなかった今年の日本列島。「脱水症状」や「熱中症」などの有難くない用語が躍る季節もこれからが本番だが……。
コンビニでも売れ筋商品のペットボトル1本分(500ml)よりも多い水分が体外に排出されると、ヒトの体は既に「水分不足」に陥っているとか。ちなみにヒトは膀胱におよそ600ml前後の尿が溜まると「尿意」を覚えるそうだが、それは忘れてもいい雑学――。
どうか、今年の夏からは「喉が渇きを感じてからでは遅すぎる」という補給時を標語のように憶えていただきたいもの。いや、今この瞬間から水分補給をどうぞ!
(文=編集部)