海外渡航が増えるGWに「麻疹(はしか)」が広がる恐れ!「風疹」「おたふく風邪」にも注意!

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難聴になるリスクが高い「おたふく風邪」も注意

 感染力が高い麻疹や風疹のほか、初夏に注意したい感染症が「おたふく風邪」だ。現在放送中のNHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の主人公・楡野鈴愛(にれの・すずめ)は、小学3年生の時に、おたふく風邪に感染したため、合併症の難聴にかかり、左耳の聴力を失っている。

 患者の飛沫や接触によって感染するおたふく風邪(流行性耳下腺炎)は、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺が腫れるウイルス感染症だ。国内で毎年約200万人以上が発症。4歳が最も多く、3~6歳が約60%を占める。通常は、発症後1~2 週間で軽快するが、髄膜炎、髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などの合併症を伴うので怖い。

 感染力は、麻疹ほど強烈でなく、妊婦に感染して子供に先天性奇形を引き起こすリスクもない。だが、集団発生すれば、重大な合併症が起こる。特に多いのが、思春期後の男性の約20~30%がかかり、約10%が受精能力を低下させる精巣炎と、思春期後の女性の7%が発症する卵巣炎だ。また、無菌性髄膜炎、髄膜脳炎の原因になり、難聴、全身麻痺、歩行困難の合併症が起きやすいので、侮れない。難聴になる人は約1000人に1人。国内では 2015~16年の2年間に難聴になった人が約350人もある。

 感染期間は、麻疹や風疹が発症後5日間なのに比べて長い。学校保健安全法は「耳下腺、顎下(がっか)腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、耳下腺の腫脹が消え、全身状態が良好になるまで出席停止」としている。したがって、おたふく風邪にかかった子供は、10日程度欠席する必要があるため、共働きの家庭なら世話のために休職する他なくなるので、負担が大きい。

 現在、海外では麻疹(Measles)、おたふく風邪(Mumps)、風疹(Rubella)の頭文字をとったMMR(三種混合ワクチン)が普及し、小児は2回定期接種を受けている。

 MMRは、かつて日本でも定期接種していたが、おたふく風邪ワクチンによる無菌性髄膜炎の副作用が問題化し、1993年以降は、MR(麻疹風疹ワクチン)の定期接種が常態化している。しかし、おたふく風邪ワクチンを接種すれば、およそ90%以上の人が発症を免れるとされる。おたふく風邪ワクチンの副作用リスクよりも、感染症の発症リスクのほうが大きいにもかかわらず、定期接種に組み込まれていないため、国内の接種者数は少ない。

 日本は、すべての人が接種を受けるべきという国際的な常識に反する歪んだ現実がある。厚労省は、副作用のリスクを過度に警戒しているのではないだろうか?

「持ち出さない、かからない、持ち込まない」

 さて、GW前に注意したい、麻疹、風疹、おたふく風邪の情報を詳しく見てきた。感染症は「持ち出さない、かからない、持ち込まない」が大原則だ。

 海外渡航を計画している人は、出発前に検疫所のホームページ外務省の海外安全ホームページにアクセスし、渡航先の感染症の発生状況や注意事項を確認しよう。

 先述したワクチンの予防接種についても、余裕をもって医師に相談し、予防策を立ててほしい。よい旅行を!
(文=編集部)

*参考
国立感染症研究所感染症情報センター
家庭の医学大全科

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