海外渡航が増えるGWに「麻疹(はしか)」が広がる恐れ!「風疹」「おたふく風邪」にも注意!

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どんな人が「麻疹」に感染するのか?

 感染予防は、空気感染もするので、手洗い、マスクだけでは予防できないため、麻疹ワクチンの予防接種が最も有効な予防法だ。

 感染研感染症疫学センターの多屋馨子室長は、連休で人の行き来が多くなり、感染が拡大する可能性があるため、麻疹ワクチンの2回接種を勧める。1回だけでは約20人に1人は免疫が獲得できない例がある。沖縄県内の感染者も、接種歴が「無し」「1回」「不明」が約8割を占めている(朝日新聞2018年4月22日)。

 日本では2006年に、1回だった定期接種を2回に増やしている。その後、定期接種が1回だった世代の一部にも追加接種を行ったため、1990年4月2日以降に生まれた人は免疫がある。だが、1990年4月1日以前に生まれた人で、麻疹にかかっていなければ、免疫が十分でない恐れがある。幼少期にかかったことがある人も、記憶に頼らず抗体検査で確かめなければならない。

 したがって、海外渡航を計画している場合は、「定期予防接種対象者」はもちろん、麻疹にかかったことがない人、麻疹ワクチンを2回接種していない人は、予防接種を必ず受けよう。なお、「定期予防接種対象者」は、1才から2才未満に1回目を、小学校入学前の1年の間に2回目の予防接種を受けなければならない。

 また、海外では、麻疹だけでなく、風疹も流行しているので、 MR(麻疹風疹麻混合)ワクチン」の接種が欠かせない。混合ワクチンの任意接種と抗体検査は全額自己負担なので、それぞれ1万数千円と数千円かかるが、費用を助成する自治体もある。接種後2週間は発熱や発疹の可能性があるため、早めの接種が望ましい。

 なお、発熱がある人、妊娠の可能性がある人、免疫不全の疾患がある人、ワクチン接種でアレルギー反応を起こしたことがある人は接種できないので、よく注意しよう(朝日新聞2018年4月22日)。

「風疹」にも要警戒

 先述のように、怖いのは麻疹だけではない。「風疹」や「おたふく風邪」などの感染症も要警戒だ。

 春先から初夏にかけて多く発生する風疹は、風疹ウイルスによって起こる急性の発疹性感染だ。集団生活に入る1~9歳頃に多発するが、近年は成人男性も頻繁に見られる。国内で2015年に163例、2016年に125例の報告例がある。2014年は世界中で3万3068人が発症し、その多くがアフリカとアジア諸国の患者だが、日本のように風疹の「排除宣言」をしている国でも輸入感染が起きている。

 感染経路は、飛沫感染、接触感染が多い。主な症状は、感染から14~21日の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹(耳介後部、後頸部)が現れる。だが、発熱は患者の約半数だけで、不顕性感染(無症状感染)がおよそ15~30%。感染力は麻疹や水痘(水ぼうそう)ほどは強くなく、予後良好な疾患とされる。

 ただ、風疹の症状は、子供は比較的軽いが、大人がかかると、脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が2000〜5000人に1人の頻度で発生する。発熱や発疹の期間が長引き、関節痛がやまないため、軽視してはならない。

 また、風疹への免疫が不十分な女性が妊娠初期に感染すると、風疹ウイルスが胎児に感染し、難聴、心疾患、白内障、心身の発達障害の遅れなどをもたらす「先天性風疹症候群(CRS)」を招くリスクが高いので要注意だ。世界保健機関(WHO)によると、年間10万人以上の「先天性風疹症候群」が発症していると推計している(「WHO Rubella Fact sheet」2017年3月)。

 感染予防は麻疹と同様に、海外渡航を計画している場合は「定期予防接種対象者」はもちろん、風疹にかかったことがない人、風疹のワクチンを2回接種していない人は、MR(麻疹風疹麻混合)ワクチンの接種が欠かせない。

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