老化を遅らせることにもつながる
ところで最近「立つだけダイエット」が話題になるときに喧伝されるのが、「エネルギー消費量が座っているときの2倍になる」という説だ。しかし、残念ながら今回の解析では、そこまでの効果は期待できず、見方によっては、ほんの小さな違いにすぎないように思える。
その点についてLopez-Jimenez氏は、今回の解析の対象となった研究のほとんどが「じっと座っている場合」と「じっと立っている場合」を比べたものであることに言及。「実際には立っていても小さな動きを伴う場合が多いため、実生活で得られるメリットはより大きい可能性がある」と指摘している。
そして、「立っていても無意識のうちに左右の重心を移したり、体を揺らしたり、前後に足を動かしたりするもの。また仕事中にファイルを取りに行ったり、ゴミ箱にゴミを捨てに行ったりするなど、歩く機会もあるだろう」と同氏は説明する。
たとえば、2014年に英チェスター大学のジョン・バックリー教授(運動科学)らが実際にオフィスで行った実験では、3時間の立ち仕事で1日当たり150kcal余分にエネルギーを消費したという結果が出ている。そうしたことから、実際の効果は今回のメタ解析の結果より大きいと思ってもいいだろう。
立ったり歩いたり姿勢を維持する動作を支える太腿やお尻、お腹、背中の筋肉は、年齢と共に衰えやすい。1日に数時間、立つことは、減量に役立つだけではない。加齢の影響を受けやすいこれらの筋肉を鍛え、全身の若々しさを保つことにもつながる。
毎日の「立っている時間」を増やそう
もともと人間の体は立つことを前提にできているので、本来は長時間、座り続けるより、立っていたほうが負担は少ない。スタンディングデスクを仕事に取り入れた人の間では「疲れにくくなった」「肩こりや腰痛が和らいだ」という声も多い。
そうしたことからここ数年、海外企業や一部ベンチャー企業、外資系企業では健康促進のためにスタンディングデスクを導入するケースが増えた。しかし、大多数の日本企業では、まだ座って仕事をする環境のオフィスがほとんどだろう。
そうした場合は、オフィスのデスク以外の場所で、できるだけ立って過ごすようにしてみてはいかがだろうか。誰にでもできる工夫としては、以下のようなものがある。
●電話をする、郵便物の整理をする、本を読むなどの動作を立ったまま行う。
●通勤電車では座らずに席を譲る。
●打ち合わせはなるべく電話やメールで済まさずに相手に直接会う。
●仕事中は1時間ごとに立ち上がりオフィスを歩き回るか軽い体操をする。
●ランチの時間には少し離れた店まで10〜20分歩く。
●エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を上り下りする。
●コーヒーブレイクや仕事帰りの一杯はスタンドの店を選ぶ。
毎日無理なく減量を目指したい人は、まずは1日1時間でも立つ時間を増やすことから始めてみよう。
(文=編集部)