国際放射線防護委員会の「インチキな放射線防護学」を信じるな?(depositphotos.com)
3月11日、東日本大震災、そして福島第一原子力発電所事故の発生から7年を迎える。
被災地の復興が進む一方、復興庁が2018年1月にまとめた震災による避難生活者は、約7万5000人。いまだに多くの被災者が故郷を離れたり、仮設住宅での不自由な生活を余儀なくされたりしている。
40年かかるとされる福島第一原発の廃炉作業の歩みは遅々としており、汚染水から放射性物質を取り除いた「処理水」の扱いも決まらず、その保管場所は21年になくなる可能性が浮上している。
人類のバラ色の未来をつくるはずだった原子力エネルギーは、未曾有の事故によって国土消滅というリスクを伴うことを露わにした。
科学・医学・技術は、第二次世界大戦を挟む今から70~80年前から劇的に進歩した。この進化は長い人類史の中でも特筆すべきものだ。
たとえば、1938年に原子核分裂が発見され、1953年にはDNAの二重らせん構造が発見された。それにより、大量殺戮兵器の開発と遺伝子レベルでの医学研究や遺伝子組換え技術が世界を作り変えようとしている。
こうした科学・技術には「光」と「影」があり、使い方によっては、バラ色の夢の世界を創出するだけではなく、人類滅亡へと繋がりかねない負の側面を持っている。
そして、それらの科学・技術は「人類の繁栄ために使われる」という崇高な理念よりも、現状では「金儲けの手段」として使われているため、「不都合な負の側面」は隠蔽されやすいという。
「その代表的なものが、放射線の健康被害問題だ」と指摘するのは、昨年(2017年)末に上梓された『患者よ、がんと賢く闘え! 放射線の光と闇』(旬報社)の著者・西尾正道医師だ。約40年間、がん治療の領域で、放射線治療医として格闘してきた。
現在ではがん治療の選択肢のひとつとして認知される放射線治療だが、西尾医師が放射線治療に携わるようになった1970年代は、「放射線治療は他科の医師もよく理解しておらず、手術ができない人や他に治療法がなくなった人を紹介されるのが日常だった」という。
執筆のきっかけは「福島原発事故」
西尾医師が本書を執筆するきっかけとなったのは、2011年3月の福島第一原発の事故だったという。それが改めて「放射線の健康被害」について考える機会となった。
「20世紀後半から人類は、放射線との闘いの時代となった。核兵器開発や原子力発電所を稼働するために、『放射線による健康被害』という裏の世界の真実は隠蔽された。そして、科学的とは言えない理屈で、国民を騙し続けている」(西尾医師)
本著の第1部「放射線の光の世界を求めて――がんと賢く戦う」では、西尾医師が支援する「市民のためのがん治療の会」の活動を中心に、同医師のライフワークとなっている低線量率小線源治療を論じている。なかでも問題に挙げるのは、「医療従事者の被ばく」だ。
この治療は、「医療従事者の被ばくの問題によって<絶滅危惧治療>となっており、将来的に忘れられる治療となる。それを記録として残すために、典型的な症例を提示しました」という。
そして、患者にとっては内部被ばくを利用したこの治療を理解する上で、参考となる希少な臨床写真が掲載された。