福島第一原発事故から7年~放射線治療の専門家・西尾正道医師が説く、放射線の光と闇

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国際放射線防護委員会(ICRP)の「インチキな放射線防護学」

 第2部「放射線の闇の世界を考える――核汚染の時代を生きる」では、政府や行政が原発事故対応の根拠としている国際放射線防護委員会(ICRP)ついて、西尾医師が言うところの「インチキな放射線防護学」が論じられている。

 「疑似科学的物語で放射線の健康被害を過小評価して核兵器や原子力政策を行っている問題を、放射線治療を生業としてきた臨床医の実感から、そのインチキさをラディカルに考えてみました」

 「放射線の健康被害に最も関与しているのは内部被ばくと考えられ、発がんや慢性疾患も長寿命放射性元素体内取込み症候群の一つとして考えられるのです」と、西尾医師は主張する。

 原発事故後、福島の子どもたちの甲状腺がんが、放射線由来の多発かどうかが議論されている。「この問題に対しても、福島県に出かけて、甲状腺の超音波装置による検査を行ってきた経験を踏まえ、私の見解も掲載しました」と西尾医師。

 放射線は、科学性をもった正しい知識で利用することが重要であり、その光と影の世界を使い分ける見識が求められる。
 
 そして、「放射線による健康被害という『影の世界』や『負の側面』に関しては、『闇の世界』に押し込めることなく、科学的に研究・分析されるべき」と、西尾医師は強く主張する。

 第3部「日本の医療と健康問題を考える」では、崩壊しつつある日本の社会保険制度の問題をはじめ、TPPがもたらす医療制度の破壊、そして、がん治療の現在、なかでも「がん登録」制度について論じている。

 現在、がん患者は年間100万人を超え、原因が解明されていない指定難病は330疾患に増加している。がん医療の課題と放射線による健康被害を過小評価する今日の風潮を、ラディカルに指摘する本書は、これからの日本の医療を考えるための一助となるだろう。
(文=編集部)


西尾正道(にしお・まさみち)
北海道医薬専門学校校長、独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター名誉院長(放射線治療科)、「市民のためのがん治療の会」顧問、認定NPO法人いわき放射能市民測定室「たらちね」顧問、「関東子ども健康調査支援基金」顧問。
1947年、北海道函館市生まれ。1974年、札幌医科大学卒業。国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科に勤務し、39年間、がんの放射線治療に従事。がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。

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