除染廃棄物の仮置き 東北の山親父/PIXTA(ピクスタ)
東京電力福島第一原発では現在、毎日約6000人の作業員が被ばくのリスクを負いながら働いている。政府・東電の工程表では、廃炉完了まで事故から最長40年という見込みだ。
しかし、1~3号機の原子炉内で溶けた燃料はまだその所在すら正確に把握できていない。そのため、「廃炉完了までには100年単位の時間が必要」と指摘する専門家もいるという。
毎日新聞は今月、廃炉作業に携わる協力企業に行ったアンケート調査の結果を報じた。それによると、回答があった半数に当たる21社が「作業員不足を懸念している」という。
被ばくのリスクのため若手が集まりにくく、作業員の高齢化が進み、さらに廃炉が遅れる恐れもある。作業員の継続的な確保が、課題のひとつとなっている。
福島第一原発事故による「鼻血問題」を提起した『美味しんぼ』原作者・雁屋哲氏が昨年12月に一橋大学で行った講演では、放射能に汚染された地域の除染作業について話題が及んだ。
除染作業員の被ばく量管理の実態
福島第一原発の事故後、たびたび取材で福島を訪れていた雁屋氏は、自分が目にした除染作業の様子についてこう述べた。
「マスクをせず、なんの防護服も着ないで、汚染されたものを直に抱えて運ぶんです。彼らが運んだものを、手持ちの線量計で測ったら1.2~2.3マイクロシーベルトでした。彼らは、ガラスバッジ(被ばくした積算値を計測できる個人用線量計)を持ってはいませんでした。累積被ばく量を計測していない状況でした」
同講演の進行役を務めた、映像作家の鎌仲ひとみさんも、次のように証言した。
「取材中、除染作業に携わる人にたくさんお会いし、その方々が宿泊している宿に私も泊まりました。その宿の掃除担当のおばさんは『枕が血で汚れていた』『ゴミ箱には痛み止めや頭痛薬、目薬などの市販薬の空箱がたくさん捨ててあった』など、作業員の健康被害を教えてくれました」
全国から作業員として集まってきた人たちは、除染作業を一定期間行ったあと、地元へ帰っていく。
廃炉や除染に関わる求人は、現在も数え切れないほどある。地元の建設会社から関東に本社がある大手ゼネコンの下請けまで。求人の待遇を見ると、個室完備とは書いてあっても、「作業前・作業後の放射線チェック」や「電離放射線健康診断」について触れているのは少ない。
作業に携わることで起きる被ばくに関しての管理がずさんであることが伺える。