課題は、アクセシビリティ(使いやすさ)とセキュリティの両立!
しかし、課題もある。IoMTの前に大きな難題が横たわっているのがIoMTのリスク、つまり、アクセシビリティ(使いやすさ)とセキュリティの両立だ。
米国ではFDA(食品医薬品局)がIoMTのリスクに関するガイダンスを定め、規制に乗り出しているものの、IoMTに関する法律も判例法も未整備なので、コンプライアンス(法律遵守)の基準は曖昧で定まらない寒々とした状況だ。
そのため、医療機器メーカーやシステム開発企業は、IoMTを取り巻くFDA規制や法律の動向を常に監視しつつ、ベストプラクティス(最善慣行)に従って行動しなければ、サイバー脆弱性というセキュリティ・リスクを背負う恐れがある。
現在、IoMTを狙ったサイバー攻撃が急増していることから、医療機器メーカー、システム開発企業、医療機関、セキュリティ企業は、ますますナーバスにならざるを得ない。
IoMTの導入が加速すればするほど、医療機器メーカーやシステム開発企業は、医療機器に影響を及ぼすセキュリティの脆弱性、不確実な責任の状況、新たな規制への対策に取り組まなければ、サバイバルできない。
しかも、IoMT関連の訴訟増加しつつあるため、米国議会はIoMTのセキュリティを保護するコンプライアンス基準の制定を急いでいるが、法律の規制や基準は、後手後手に回っている。
しかし、希望はある。このような厳しい状況でも、IoMTは、医療業界のほぼすべての分野に浸透し、病院が直面する様々な経営課題を改善・解決している事実は変わらないからだ。
さて、対岸の活況を遠巻きに見ている日本。病院の対応は、様々な障壁や医療事情によって遅れているが、今後、IoMTのソリューションが加速するのは確かだ。
IoMTの未来は限りなく明るく希望に満ちている。IoMTのイノベーションから目が離せない。
(文=佐藤博)
*参考:「米国の病院におけるIoTの活用状況/2017年5月26日JETRO/IPA New York」 https://www.jetro.go.jp/world/reports/2017/02/2fbd6d9d9e8b8713.htm)。
佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。