シリーズ「AIと医療イノベーション」第17回

AI(人工知能)が食品ロスを減らす! 世界初「食品すべて無料」スーパーが成り立つ理由

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AI(人工知能)で需要を予測し食品ロスを削減! レジも値札もない「食品すべて無料」の世界初のスーパーが成立する理由の画像1

日本の食品ロスの量は世界の食料援助量の約2倍の642万トン(depositphotos.com)

 オーストラリアのシドニー南部に「食品すべて無料」のスーパー「オズハーベストマーケット」がある。大手スーパーが賞味期限切れ前に処分する食品を譲り受けて提供している。

 小売業者から譲渡された賞味期限切れ前の食品を販売するスーパーはデンマークにあるが、「食品すべて無料」は世界初の試みだ(「朝日新聞」2017年7月8日)。

 約200平米の店内に果物、野菜、パン、コーンフレーク、ビスケットなど約2000点が並ぶが、値札もレジもない。客は、スタッフの説明を聞きながら、買い物かご一つを限度に食品を手にできる。開店時間は平日の午前10時〜午後2時。毎日約150人が来店し、食品の大半はすぐになくなる。

 運営しているのは、2004年以来、オーストラリア各地で生活支援が必要な人に計6500万食を提供してきた市民団体「オズハーベスト」(ロニ・カーンCEO)だ。すべて無料だが、客には「寄付」を依頼しているので、4月の開店から5週間で2万豪ドル(約170万円)が集まった。

 寄付金は「オズハーベスト」が行なっている食事提供事業の費用に充当される。スタッフ約10人はボランティア。しかも、家賃や光熱費は趣旨に賛同したビルのオーナーの厚意で無料だ。

 食品ロスは豪州でも深刻な社会問題だ。シドニーのあるニューサウスウェールズ州の調査(2009年)によれば、平均世帯で年間1036豪ドル(約8万6000円)に相当する食品を捨てている。

 カーンCEOは、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」問題に対する理解や意識を高めてもらい、生活に困っている人々の支援も行ないたいと、朝日新聞の取材に答えている。

日本の食品ロスの量は642万トン!世界の食料援助量約320万トンの約2倍

 世界各国で深刻化する「食品ロス」問題。国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の飢餓人口10億人を十分に養える量に相当する年間およそ13億トンもの食品が廃棄されている。

 有数の廃棄大国が日本――。消費者庁「平成28年度消費者白書」によれば、年間の食品由来廃棄物の発生量推計2801万トンのうち、食品ロスの量はおよそ642万トン(約23%)。642万トンは世界の食料援助量約320万トン(2014年・国連世界食糧計画)の約2倍。

 世界最大のノルウェー船籍の原油タンカー、ノック・ネヴィスの載貨重量56万4763トンのおよそ11隻に匹敵する膨大な重量になる。

 また、国連の「持続可能な開発目標」に関する報告書によれば、最終的に廃棄される食品の生産に使用されるエネルギーは、温室効果ガス排出の大きな要因でもある。

 世界各国も日本も、食品廃棄物の処理や食品ロスの削減に向かって懸命に知恵を絞っている。食品の製造・流通の需給予測は、気候変動や嗜好の多様化などの要因に左右されやすいため、難しいが、食品の製造・流通の需給予測にAI(人工知能)を活用するプロジェクトが立ち上がっている。

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