完璧主義者の結果、精神を病んでしまう例も
総じて上昇傾向を示した要因は「複数ある」とCurran氏は語る。
1つは、今日のソーシャルメディアの普及だ。一見、自己中心的でありつつも、多様な価値観を受け入れ、仲間との交流も尊重する、ミレニアル世代には欠かせないメディアの「影響が侮れない」と指摘する。
「今後のさらなる検証が必要ではあるが、ソーシャルメディアの登場と普及は『他者と比べて、より完璧でなければならない』というプレシャーを今日の若者層に与えていることを示唆するデータも存在する」とCurran氏。もしや「インスタ映え」も、そんな強迫観念エイジ特有の象徴的現象なのか……。
完璧主義者には上記の3タイプ以外にも、「失敗を恐れて新しい挑戦をしない」「達成感を持てないと自尊心がキープできない」「成功時も素直に喜べない」「自分の人生に満足できない」などの特性があって、結果、精神を病んでしまう例も少なくない。
Curran氏は、今日の大学教育が「より高い社会的地位」や「経済的地位を得る」ため、学生間の競争を促している傾向への懸念を指摘する。結果、ミレニアル世代では「能力主義の考え方」が増殖し、ひいては完璧主義者の増加につながっているのではないかと考察している。
「周囲の期待に応えるための競争を常に強いられている若者たちは、『完璧主義』をまとうことで自分の存在価値や社会的なつながりを感じ取り、それで安心感を得ているのかも」
教育関係者や政策立案者は「競争を促すアプローチからの転換」を
米国の調査機関の概算によれば、米国人労働人口に占めるミレニアル世代の割合は「3人に1人を上回って」いる。東京五輪・パラリンピックが開催される2020年には、世界の労働人口の「3分の1以上」をミレニアル世代が占めるとも言われている。
「ミレニアルですが、なにか?」あるいは「完璧主義者ですが、なにか?」という働き手の増加に加え、日本のミレニアル世代は「所属企業への帰属意識」が、世界の傾向に反して低下しているとのコンサルティング調査もある。人事関係者の悩みは尽きない?
「この10年で抑うつや不安、自殺願望を持つ若者の割合が上昇している。こうした傾向にも完全主義者の増加が影響している可能性が否めない」
そう指摘するCurran氏らは、若者層の精神衛生上の改善のため、教育関係者や政策立案者に向けて「競争を促すアプローチからの転換」を訴えている。
(文=編集部)