「男性の肥満」は精子の数・濃度・運動率低下させ、不妊の原因になる
大気汚染が精子の活力を削いでいる! 聞き捨てならない衝撃的な研究だ。だが、精子が萎える元凶は大気汚染だけではない。
「男性の肥満」が精子の数・濃度・運動率を低下させ、不妊の原因になるとするインドの研究があるからだ。どのような研究だろう?
インドのクリシュナIVFクリニック生殖補助センターのGottumukkala Achyuta Ramaraju氏は、2016年にインド国内の不妊治療施設に通院した男性1285人の精子を対象に、コンピュータによる精子画像解析法(CASA)のデータを精査し、『Androgia』9月19日オンライン版に発表した。
発表によれば、体格指数上で肥満(BMI30以上)の男性は、肥満でない男性よりも精子の量、濃度が低く、女性の生殖管を移動する運動率も低かった。また、肥満男性の精子は、頭部が薄く、洋梨状に細長い傾向が強いため、これらの異常が性交やIVF(In Vitro Fertilization:体外受精)による着床を困難にする可能性が大きい事実が判明した。
Ramaraju氏は「肥満の女性が妊娠しにくい点はよく知られているが、男性にも同様の傾向(受胎の遅れの原因)がある事実がが裏付けられた。受胎時の親の肥満が、胚の健康、移植、妊娠、出生率に悪影響を及ぼしている」と説明する。
一方、米国ノースウェルヘルス・ファーティリティのAvner Hershlag氏は「男性の約3人に1人が肥満という実情を抱えるわが国にとって、この知見は大変重要だ。肥満と不妊の直接的な因果関係を示したわけではないが、精子の質が低下し続けてい現実が明確に裏付けられた」と解説する。
ちなみに、世界保健機関(WHO)によれば、2016年に世界中で肥満の青少年(5~19歳)が1億2400万人、太り気味の青少年が2億1000万人いると推定している。さらに、WHOの報告書は、砂糖を多く含む清涼飲料水や加工食品などの摂り過ぎが肥満の原因であると強く指摘している。
このように成人の肥満による欠陥精子は、受胎能力や受胎の可能性を阻害しかねない。特に40歳以下の男性なら、禁煙や高脂肪の食品などを控え、環境汚染のない環境で暮らせば、精子は健康を保ちやすい。
ジャンクフードや添加物が豊富なインスタント食品などを控える。日頃のカロリー摂取量を調整する。ビタミンC・D・E、カルシウムや亜鉛を意識して摂る。精子の質を改善する方法は身近にいくつもある。精子は、デリケートな正直者! 大気汚染も肥満もたばこも偏食も大苦手だ。
(文=編集部)