尿を使った「がん診断」に期待!画像診断などでは見つけにくい微小な腫瘍を検知

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着々と進化を遂げるリキッドバイオプシー!

 このようにリキッドバイオプシーは進化が早く、多くの研究がしのぎを削っている。

 たとえば、マイクロRNAをマーカーとするがんの早期発見の成果が注目されているのが日本医療研究開発機構(AMED)の「体液中マイクロRNA測定技術基盤開発プロジェクト」だ。国立がん研究センターや国立長寿医療研究センター、東レ、東芝、アークレイなど9法人・団体が参加。胃、食道、肺、肝臓、胆道、膵臓、大腸、卵巣、前立腺、膀胱、乳、肉腫、神経膠腫の13種類のがんを、血液から採取したマイクロRNAを使って早期に発見する。マイクロRNAがどのように発現しているかを調べれば、がん罹患の有無を95%以上の高精度で判定できるとしている。

 また、シスメックスとJVCケンウッドは2016年に血液中のエクソソームを解析する診断機器を共同開発。ナノビーズを用いた光ディスク技術を生かし、血液中のエクソソームを捕捉および計数する装置と、エクソソームが内包するマイクロRNAを測定する装置をドッキングし、がんの早期発見に役立てつつ、成果を実証している。
 
 さらに、アークレイ社と東京大学生産技術研究所の共同研究チーは、血液中にある微量のがん細胞(CTC)を解析する新たな高純度濃縮システムを開発した(「日経デジタルヘルス」2016年10月19日)。 高純度濃縮システムは、転移性がんの診断、薬剤耐性がんの経過観察、治療効果の早期判定に有用性が高いという。

低侵襲の診断法として大きな意味を持つリキッドバイオプシー!

 現在、がんの確定診断は、主に3つの手法を併用して行われている。がん組織の一部を採取するバイオプシー(生体診断)、CT検査によって腫瘍の大きさを評価する画像診断、血清のタンパク濃度を測定する腫瘍マーカーだ。

 だが、バイオプシー(生体診断)は、患者の精神的・肉体的ストレスが少なくない。CT検査による画像診断は、数ヶ月間隔で実施するため、がんの大きさの変化の推移をリアルタイムに把握しにくいことから、治療の奏功率を正確に判断できない。腫瘍マーカーは、他の炎症などによっても数値が上昇するため、がんの大きさや病態との関連性を掴みにくく、確定診断を困難にしている。

 このような多難な課題を克服するのが、リキッドバイオプシーだ。低侵襲の診断法として大きな意味を持つリキッドバイオプシーが医療費増加を抑制するプレシジョン医療に及ぼす影響とメリットを強調するのが、シカゴ大学医学部血液・腫瘍内科の中村祐輔教授だ。

 中村教授は「医療費の増加が必然の高齢化社会を乗り切るためには、ゲノム情報などを利用したプレシジョン医療が絶対的に必要だ。がんに限らず、病気の予防(ヘルスケア)、早期発見・早期治療は医療費の削減につながるはずだ。特に、リキッドバイプシーは、がんの医療体系を変える」と語る。

 低侵襲の診断法のリキッドバイオプシーのメリットは次の通り整理できる。

【1】がんのスクリーニング
【2】がんの再発モニタリング
【3】がんの治療効果(薬物療法・免疫療法)の判定
【4】治療薬耐性の判定

 そのほか、かかりつけの医療機関で簡便に採取できる利点もある。

 中村教授は「日本には、海外に比してCTやMRIなどの診断機器が溢れているので、これらの検査を比較的簡単に受けることができるが、これらの検査の手間を考えれば、血液である程度診断できれば、専門医療機関へのアクセスが悪い患者さんにとってもメリットが大きいはずだ」と指摘する。

 尿や血液からがん診断できるリキッドバイオプシー。そのキャパシティは限りなく大きい。今後も期待しよう。 
(文=編集部)

*参考:『中村祐輔のシカゴ便り』

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