ジグリング(貧乏ゆすり体操)は変形性関節症(股OA)の疼痛を飛躍的に軽減
貧乏ゆすりの明るいエポックはまだある――。多くの医療機関は、ジグリング(貧乏ゆすり体操)を変形性関節症(股OA)のリハビリに採用し、変形性股関節症(股OA)の疼痛軽減の有効性を確認しているのだ。
2017年10月20日に第3回ジグリング研究会(研究責任者=久留米大学医療センター整形外科・関節外科センター教授・大川孝浩氏)が開催された。今回発表されたのは、全国10施設の多施設共同研究のうち2施設からの中間報告。最終的な研究成果は、今後の日本股関節学会で発表される予定だ。
川崎医科大学骨・関節整形外科学教授の三谷茂氏は、2016年11月〜17年3月に同大学病院を外来通院中で、人工股関節置換術を希望しない進行期・末期股OA患者77例(36〜77歳、男性7例、女性70例)を対象に、ジグリングを含む保存療法を2年間行った結果を発表。
保存療法は「①ジグリング(貧乏ゆすり体操)を30分以上できるだけ長時間続ける」「②カイロやサポーターなどでの保温を行う」「③立ち上がりやしゃがみ込みの回数を減らす」「④腹筋と大腿四頭筋を鍛える」などを、患者のモチベーションに応じて行った。
その結果、関節裂隙が改善した症例は77例中12例(16%)、股関節機能判定基準(JOAスコア)が改善したのは18例(23%)だった。
久留米大学医療センター整形外科・関節外科センター病棟医長の久米慎一郎、石橋千直の両氏は、2017年3月以降に器械によるジグリングを3カ月以上継続した症例の途中経過を報告した。
対象は前期〜末期股OA患者53例。X線画像上、関節裂隙の開大が確認できるまでには時間がかかるため、今回は「①股関節の状態(VAS)」「②痛み」「③動作」「④メンタル―」の4項目から成る日本整形外科学会股関節疾患評価質問票(JHEQ)を用いて評価した。
その結果、53例で「VAS:63mm→54mm」「疼痛:17→19」「動作:8.7→ 10.7」「メンタル:12.9→14.8」と、全ての項目で改善傾向が認められた。もともと疼痛のない13例を除外した40例で集計すると、疼痛は13.5から17.5と大幅な改善が認められた。
ジグリングは股OAの保存療法として期待されているが、研究報告が少ないため、多施設共同研究の結果に注目が集まっている。研究責任者の大川氏は「当院は、2017年3月から数回、患者への臨床説明会を開き、既に70例の患者が集まった。全国10施設で200例程度を目標に集めていきたい」と臨床試験の継続に意欲を示している。
この日の会合では「『ジグリング』の定義は『貧乏ゆすり』でよいのか」「器械を使った『他動』なのか『自動』なのか、など明確な定義づけをしていく必要がある」「患者のモチベーションを維持するためにも、多面的なフォローアップが必要」など活発な意見交換が行われた。
このように、日常生活でもオフィスでも、医療現場でも、今や貧乏ゆすりの有効性と貢献度は実証されてきている。周りの人や環境への配慮やマナーさえ怠らなければ、貧乏ゆすりは、実用性の優れた万人のための健康法であるのは確かだ。
(文=編集部)