心臓手術は「午後」がベスト!(depositphotos.com)
リール大学(フランス)のDavid Montaigne教授らの研究グループは、心臓手術(大動脈弁置換術)は「午前」よりも「午後」に実施したほうがより良好な転帰につながるとする研究成果を「The Lancet」10月26日オンライン版に発表した(「HealthDay News」2017年10月26日)。
発表によれば、研究グループは、大動脈弁狭窄症を発症し大動脈弁置換術を「午前に受けた298人」と「午後に受けた298人」の計596人の医療記録を500日間追跡した。
その結果、追跡期間中に心血管イベント(心血管死、心筋梗塞、急性心不全による入院の複合)が発生するリスクは、「午前に手術を受けた患者群」よりも「午後に手術を受けた患者群」が50%も低かった。この低リスクは、午後に手術を実施すれば「患者11人中1人」の心血管イベントを回避できる可能性を示唆している。
心臓は概日リズム(体内時計)による影響を受けるため午前の手術は修復能が低い
また研究グループは、大動脈弁狭窄症患者88人を対象に、ランダム化比較試験も実施した。
その結果、「午前の手術に割り付けられた群(44人)」と比べて「午後の手術に割り付けられた群(44人)」は、周術期における「心筋トロポニンT」の流出が少なく、心筋組織の損傷度が小さかった。さらに、患者から採取した心臓組織検体の遺伝子解析を行ったところ、「午後に手術を受けた群」の組織は、概日リズム(体内時計)に関連する287の遺伝子の活性力が高かった。
Montaigne教授は「心臓は概日リズム(体内時計)による影響を受けることから、午前は心臓の修復能が低いので、術後のアウトカム(結果・成果)に関係する可能性が高い。午後に手術すれば、術後の心血管イベントのリスクを低減できるかもしれない。したがって、午後に手術を受ければ、概日リズムに関連する遺伝子に作用するため、心臓を保護する薬剤の開発にもつながるだろう」と期待を込めている。