政府への要望にみる日米差
もう一度、ASCOの調査結果に戻れば、回答者の多くが米国政府に対して「がん治療薬の薬価を抑制する措置を講じるべき」だと考えていることも認められた。上位3項目は以下のとおり。
①メディケアが直接、製薬会社と医療用医薬品の価格交渉をできるようにすべき【92%】
②政府が薬価を規制すべき【86%】
③国外からのがん治療薬購入を合法化すべきだ【80%】
一方、前掲の『世論調査』が問うた「がん対策に関する政府への要望」に関して、「あなたはがん対策について、政府としてどういったことに力を入れてほしいと思いますか?」という設問(複数回答可)に、日本の成人層が回答した上位4項目は次のようなものだった。
①がん医療に関わる医療機関の整備(拠点病院の充実など)【61.5%】
②がんの早期発見(がん検診)【56.3%】
③仕事を続けられるための相談・支援体制の整備【49.3%】
④がんに関する専門的医療従事者の育成【48.3%】
BEST4に「薬価」に関する要望がない点からも、日米事情の相違点は明らかだろう。しかも、今回のASCO調査が明らかにしたところでは、米国民のがん予防に対する関心は薄く、「政府は予防対策にもっと資金を投じるべきだ」と回答した人の割合は半数にも満たなかった。
さらに、肥満やアルコールが「がんのリスク因子であること」を知っていたのは全体の3分の1未満であり、がんのリスクに関する認識が低い米国事情も明らかにされた。
男性誌・女性誌を問わず週刊誌の吊り広告を一瞥すれば、毎週どこかの雑誌で「がん関連」の記事が散見されるニッポン。こうして米国民の関心の薄さを知らされると、わが国民は、やや「がん」の二文字に日々威かされて過ぎているのかもしれない。とさえ想えてくる。
(文=編集部)