糖質制限では「タンパク質と脂質をしっかり摂る」ことが重要
さらに福田医師は、高田氏の解説には整合性のない点がいくつもあるという。
「『糖新生』が生命を脅かす――とのことですが、糖新生はストレスの有無を問わず空腹時や睡眠中にも行われています。アミノ酸やグリセロール、乳酸などからブドウ糖を作り血糖値を一定に維持しています。日常的に行われている生理的な反応なのです」
また、福田医師は、筋肉量が極端に減少するのは、糖質制限によるものではなく、極度のカロリー制限をした場合だと指摘。「糖質ばかりでなくタンパク質も脂質も控えてしまい、低カロリーに陥っているのです」と加えた。
「これは、極度のカロリー制限を続けると低血糖になるため、糖新生によって筋肉が分解され筋肉量が減少し、やつれる。高田医師は、糖質制限とカロリー制限を混同しているのです」
福田医師は、「糖質制限では『タンパク質と脂質をしっかり摂る』ことが重要。脂質を摂らずにタンパク質だけを増やすと糖新生が進み、余った糖質が皮下脂肪として蓄えられ肥満になります」と警告する。
糖質量を制限したなら、脂質も一緒に摂らなければならない。脂質の中の「脂肪酸」は重要なエネルギー源になり、糖新生でのエネルギー獲得ではなく、脂質によるエネルギー代謝経路でエネルギーを生み出すからだ。
これについて、福田医師は次のように説明する。
「脂質と糖質のエネルギー代謝経路は別物です。糖質を減らして脂肪を多く摂ると、脂質のエネルギー代謝経路が優先され、脂質から先に必要なエネルギーが作られます。つまり、糖質を制限した際は高タンパク質・高脂肪食にしなければなりません。『週刊ポスト』の記事では、『高タンパク質、高脂肪食は健康に悪い』と報じていますが、参照論文はいずれもエビデンスの低いものばかりです」
今年8月、世界的な評価が高い医学雑誌『Lancet』で「炭水化物の摂取増加で死亡リスク上昇し、飽和脂肪酸(動物性脂肪)の摂取量が多いほど脳卒中のリスクが低い」と論文が掲載されて大きな反響を呼んだ。
福田医師は「糖質量を制限して、しっかりタンパク質と脂質を摂ることで、より健康になります」と述べ、「正しい糖質制限」を啓発を呼びかけている。
福田世一(ふくだ・せいいち)
小倉台福田医院(千葉県千葉市)院長。同医院は平成24年4月に開業し、内科・外科・整形外科・小児科・皮膚科を標榜。全科においてMEC食を治療方針として、高血圧や糖尿病の治療をはじめ湿潤療法による熱傷(やけど)などの創傷治療、トリガーポイント注射、エコーガイド下筋膜リリース注射による疼痛治療の緩和なども行っている。今年9月より四街道徳洲会病院(千葉県四街道市)で「MEC食外来」(電話番号:043-214-0111、毎週金曜午前に診療)をスタート。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本透析医学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、高濃度ビタミンC点滴療法認定医など。
*「小倉台福田医院」www.clinic-fukuda.jp、「MEC食ドクター福田世一 プチMEC食のススメ」seiichizb4.blog.fc2.com、「千葉・東京MEC会の情報サイト」http://meckk30.org/