「熊本地震」の避難先で起きた苦情とは?
熊本県は昨年(2016年)の3月に、市町村が避難所内にペット専用スペースを設置することなどを盛り込んだペット避難の指針を策定した。
しかし、市町村に配布する前に熊本地震が発生し、避難所にペット専用スペースを設けることができなかった。地震後間もない頃は避難所内にペットを入れた飼い主も多く、他の避難者から「うるさい」「アレルギーが出た」などの苦情が自治体に寄せられた。
そのため、熊本市などは避難所内へのペットの入室禁止を呼び掛け、ペット連れが行き場を失う事態に。結局ペットがいる被災者の多くは、車中泊やNGOが運営するペット同伴可の施設での避難生活を送ることになった。
飼い主のモラルが制度を前進させる
国が推奨する「同行避難」はあくまで一緒に避難するまでのことで、ペットと同じ施設や部屋で避難生活ができる「同伴避難」ではない。また、国のガイドラインに強制力はなく、避難所でペットを受け入れるかどうかは事実上各自治体の現場での判断となる。
各自治体は災害に備えて、ペット同行ができる専用避難所の設置や、ペット同行で避難所に入れる条件などルールの策定が急ぐべきだろう。決まり事があれば現場も混乱せず、無用なトラブルも避けられるはずだ。
もちろん自治体ばかりではなく、飼い主側も果たすべき役割と責任がある。今回の熊本地震における避難所やペット一時預け入れの場でも、一部に「ワクチンの接種をしていない」「ノミ・ダニ予防なんてしたことない」という飼い主がみられたという。
避難生活では動物が苦手な人、アレルギーを持っている人への特別の配慮が求められる。飼い主にとって「家族」であっても、それ以外の人にはストレスになることも考えなければいけない。飼い主のモラルが向上しなければ、ペット連れの避難者に対する理解も進まないのではないだろうか。
「当たり前」の備えがペットの命を守る
いざというとき、家族とペットが安全に避難をするためには、日頃から何を心がければ良いのだろうか。一例をご紹介する。
①最寄りの避難所のペット受け入れ体制を確認する
ペットへの対応は市区町村に異なる。あらかじめ各市区町村のホームページなどで同行避難ができる避難所を確認しておこう。
②鑑札や迷子札、マイクロチップで身元表示をする
ペットが迷子になり保護されたとき、すぐに飼い主がわかるように普段から身元を示すものをつけておこう。ただしマイクロチップを入れていても、動物ID普及推進会議(通称AIPO)に登録されていないと発見できない場合が。AIPOに登録されているか一度確認を。
③ケージやキャリーで落ち着けるようにする
普段からペットをケージに慣らしておけば、人の多い避難所でも落ち着いて寛ぐことができてストレス軽減。飼い主も管理がしやすくなる。
④「マテ」「オスワリ」などの基本的なしつけを
犬の場合は避難所で他の人に迷惑をかけないよう「マテ」「オスワリ」「フセ」などの基本的なしつけをし、飼い主がコントロールできるようにする。
⑤決められた場所でトイレができるようにする
ペットの排泄物は特に避難所でトラブルの元になりやすい。ペットを飼ったら必ずトイレトレーニングを。
⑥服を着ることに慣れさせる
服を着せると抜け毛が飛び散りにくくなり、動物が苦手な避難者への配慮となる。
⑦ワクチン接種や寄生虫の予防・駆除をする
多くの動物と一緒に過ごす可能性もあるので、感染症の蔓延を防ぐために狂犬病予防注射や混合ワクチン、ノミなどの外部寄生虫の駆除をしっかりと。NGOや動物病院に一時預かりを頼む場合も必須となる場合が多いので注意しよう。
詳しくは環境省やいくつかの自治体から冊子が発行されており、インターネットからダウンロードもできる。ぜひ一度目を通しておくといいだろう。
これらはペットを飼う人にとってはごく普通の心がけだが、災害時にはより一層重要になる。ペットの命を守るのは飼い主の責任。「生き物を飼うことの重さ」を今一度考えてみたい。
(文=編集部)