そもそも臍帯血の「私的保存」は有効なのか?(depositphotos.com)
8月27日、母子をつなぐ臍の緒や胎盤に含まれる「臍帯血(さいたいけつ)」を国に無届けで患者に投与していたとして、東京のクリニックの院長や販売元ら6名が「再生医療安全確保法違反」の疑いで警察に一斉逮捕された。
逮捕者が出たのは、この法律が施行された2014年以来初めてのことだ。
警察の調べによると、効果や安全性が立証されていない「がん治療」や「美容」の名目で、患者らは1回300万〜400万円もの大金を支払っており、それを会社社長やブローカー、クリニックが山分けしていた。
経営者が逮捕された京都のクリニックでは、100人へ投与し、売上は3億6000万円にものぼったという。
再生医療への期待が高い臍帯血
臍帯血の提供を受けた患者は、アンチエイジングなどの目的で来日した中国人が約3割を占める。中には、がんを患う未就学児もいたという。まさに「金のなる木」となっていた臍帯血ビジネスの闇。今回の件は、氷山の一角にすぎないと見る関係者も多い。
胎盤と臍の緒の中に含まれる血液である臍帯血は、およそ40〜100mlの量があり、赤血球、白血球、血小板などの血液細胞のもとになる「造血幹細胞」が、骨髄と同じくらい豊富に含まれている。
この臍帯血を利用すれば、「白血病」や「再生不良性貧血」などの難治性血液疾患に対して、「骨髄移植」と同様の治療を行うことができるため、1990年代から世界で広く用いられてきた。
また臍帯血は、中枢神経・自己免疫・虚血性障害などの修復に役立つ可能性のある細胞など、多種多様に分化できる能力を持つ「幹細胞」を含んでいる。このことから、臍帯血への医学的な関心は近年急増し、「再生医療」や「細胞治療」への将来的な応用が期待されている。
現在、日本には、臍帯血を医療で利用する方法がふたつある――。