航空救急は「ドクターヘリ」と「メディカルジェット」の共生時代へ
ヘリコプターや航空機を活用した航空救急は「ドクターヘリ」と「メディカルジェット」の共生時代に向かってテイクオフしつつある。「ドクターヘリ」の課題は何だろう?
1995年に発生した阪神・淡路大震災の超急性期に、被災地外への傷病者搬送に医療用ヘリコプターがほとんど活用されず、多くの外傷死があったことから、全国に先駆けて、2001年4月から川崎医科大学附属病院で「ドクターヘリ」の運航がスタート。
2016年2月現在、38道府県で46機が運航中。総出動件数は10万件以上。出動内容は、消防本部からの要請出動約70%、病院間搬送のための出動約20%、出動後キャンセル約10%。疾患別では、外傷約43%、脳血管障害約14%、心臓・大血管疾患約13%だ。
「ドクターヘリ」は、発症から短時間で適切な応急処置のできる救急医師を救急疾患の傷病者に接触させなければならないので、機動性と迅速性が要だ。したがって、消防本部司令室が「ドクターヘリ」を要請する時は、オーバートリアージ(緊急度の過大評価)が容認されている。
しかも、キーワード方式の導入によって、119番通報時の通報内容に予め設定されたキーワードがあれば、直ちに出動要請となる。その結果、出動件数が急増し、 基地病院で対応する医療スタッフの負担が増大した。
今後は消防本部司令室によるドクターヘリ要請基準の定期的な見直し、運航に関連するヒヤリハットの分析、定期的な安全運航に関連する講習会の開催などにより、安全運航の精度をあげていく必要がある、さらに経済的な問題もある。「ドクターヘリ」を配備するためには、国と地方自治体の補助金約100億円以上を捻出しなければならない。その費用対効果の検証が不可欠である。
機動力と迅速性を活かす救急搬送は「ドクターヘリ」に。高度で専門的かつ包括的な計画搬送は「メディカルジェット」に。近未来の航空救急は「ドクターヘリ」と「メディカルジェット」の共生時代へ向かっているように見える。
(文=編集部)