反ワクチンにこだわれば、麻疹、風疹、百日咳などのVPDの感染が世界に拡散する
さらに悪いことに、トランプ大統領は、反ワクチン主義者だ。なぜ反ワクチンにこだわるのか?
時間は少し遡る。1998年にMMR(麻疹―おたふくかぜ―風疹)ワクチンの接種が自閉症と関連するとする研究論文が英国の医学雑誌『Lancet』に掲載され、英国、カナダ、米国などで接種拒否が拡散。その後、MMRワクチンと自閉症の関連性は否定された。しかし、トランプ大統領はこの研究論文を頑なに確信し、反ワクチン主義を貫いている。
もし、VPDの接種サービスが中止されれば、VPDの感染に脆弱な世代が激増する。つまり、VPDへの免疫力が低くなるため、海外からVPDが持ち込まれれば、ヒト-ヒト感染によって、この世代が感染・発病するだけでなく、感染源となって米国社会に感染が蔓延する。
さらに、恐ろしい事実がある。麻疹に感染した患者の約30%は、何らかの合併症を起こす。たとえば、肺炎は約15%、脳炎は約0.1〜0.2%(1000人に1〜2人)に発症する。脳炎による後遺症の発症率は約20〜40%と高く、致死率も低くない。VPDワクチンを接種せずに感染者に接触すれば、ほぼ確実に感染・発病に至るのは明白だ。
しかも、VPDの感染は米国社会だけに留まらない。VPDに感染した人が飛行機などに乗って海外へ移動すれば、感染が輸出され、感染が一気に飛散する。2016年の関西空港での麻疹の感染拡大のように、麻疹流行の記憶は新しい。グローバル化した世界では、感染症は是非もなく国境を越えるので、感染症が世界中に蔓延するするリスクは避けられない。