気温が1度上昇する度に……
今回の研究に際しては、1996~2009年という期間中の米国50州および3領域(グアム、プエルトリコ、米領ヴァージン諸島)におけるデータと、米国疾病管理予防センター(CDC)の全国糖尿病調査システムのデータに基づく「成人の糖尿病発症率」に加え、各州の年間平均気温との関連が調べられた。
なお、参加者各自が1型糖尿病か2型糖尿病かの診断は自己申告制に基づいている。
さらに実証性を高めるため、研究班は世界保健機関(WHO)のデータベースから得た計190カ国の「空腹時血糖値の上昇と肥満率」に関するデータと、世界の年間平均気温との関連も詳細に調べた。
それらを総合解析した結果、地球の気温が1度上昇する度、米国例の年齢で補正した糖尿病発生率は1000人あたり0.314人増加した。また、世界中の耐糖能異常の有病率も0.170%増加することが判明した。加えて、温暖な気候の地域においてインスリン抵抗力性が多いとの傾向も読み取れたそうだ。
「今回の私たちの研究で、外気温の上昇が糖尿病患者の増加と関連する可能性が示唆された。かように地球温暖化はわれわれ人類の健康に深刻な影響を及ぼしているかもしれず、こうした可能性にもっと目を向けるべきだろう」
褐色脂肪細胞の影響力に異論も
しかし一方で、こんな異論もある。米国・ニューヨーク市はモンテフィオーレ医療センター臨床糖尿病センター長であるJoel Zonszein氏の見解だ。
「今回の報告が興味ぶかい研究であることは違いないけれども、糖尿病の成因はそもそも複雑であり、この褐色脂肪細胞という一つの要因と影響力がこれほど大きいものとは考えにくいのではないか」
加えてZonszein氏は、参加者の糖尿病発症数が「自己申告制」という点を問題視し、それが正確なものでない可能性や、褐色脂肪細胞の現段階でいまだ明らかにされていないという根本的な立脚点の曖昧さを指摘している。
なんでも地球上では過去およそ100万年の間に複数回の氷河期が存在し、最後の氷河期から産業革命前までの期間に約3~8度の平均気温上の変化があったとされている。それもおよそ10万年サイクルでの自然現象だというから「1度上昇」も今日・明日の喫緊問題ではないかもしれないが、むしろ糖尿病予備軍にとっては幾分「身の凍るような」話題かもしれない。
(文=編集部)