「調査対象から外れてますので正直わかりません」
消えた17万人は、前回調査の23.7%を占めていたというから、現在40代真っ盛りの「その後」を無視できない層だ。
しかし、共生社会政策担当の参事官はこう応じたという。「そこ(の層)は調査対象から外れてますので、正直わかりません」
さらに前掲の『若者の生活に関する調査報告書』なる正式名称を引き合いに出しながら、「私どもの施策の、<若者>の範囲が40歳以上ではありません。それは厚労省のほうの仕事です」と言い放ったのだ。
これでは、真面目にひきこもり問題を探求する報道陣から<二重行政の疑いのある施策>と批判されても仕方がない。
日本では1970年代から増加してきた「ひきこもり」層も高齢化に伴い、地方自治体の調査で「40歳以上が半数を超えている」のが現状だ。
しかも、今回の調査対象からは、統合失調症や身体的な病気、専業主婦(主夫)あるいは家事手伝い、そして家事・育児をする(できる)潜在層は除外されているというから呆れるばかり……。
三大挫折体験でオトナのひきこもりに
オトナのひきこもりに関しては、負のスパイラルの端緒が「就活の失敗」「職場になじめない」「病気」の挫折体験が三大要素だといわれる。
一般にイメージされる「子ども時代のトラウマ」や「不登校の延長」などが理由とは限らない。
しかも、現在40代のひきこもり層を近未来で待ち伏せている難題もかなり深刻だ。趣味に関する外出だけはする・近隣のコンビニだけは出かける・自宅から出ない・自室からも出ない…。
その度合いは十人十色だとしても、彼ら自身もその行く末を杞憂する親たちも平等に齢をとる。
問題は、親が要介護の事態を迎えた際、いわゆる「コミュ障」傾向の彼らが訪問ヘルパー制度などを受け入れなかったり、諸々の申請手続きを行なわない可能性が濃厚だという点にある。
ひきこもり第一世代(ボリュームゾーン)と呼ばれる彼ら40代が65歳を迎えるのも20年後から――冒頭のとおり、オトナのひきこもりによる経済損失額は算出しようもないが、親の納付で年金の受給資格を有しながら「所得税」は支払わない。
彼らが高齢者の仲間入りをした際、現状の年金制度ではたして持ちこたえられるのか? オトナのひきこもりとは、当事者の身内だけを襲う負のスパイラルではないわけだ。
(文=編集部)