俳優・高倉健さんや声優・松来未祐さんの命を奪った「悪性リンパ腫」の症状は？
どのような症状が出るのだろう？
初期は、頸部（首）、鼠径部（股の付け根）、腋窩（腋の下）などのリンパ節に痛みのないしこりやリンパ節腫脹（腫れ）が現れ、数週間〜数カ月間は増大し続ける。日本人は、リンパ節腫脹以外の節外性リンパ腫が40％も見られる。
病期（ステージ）が進めば、しこりや腫れは全身に広がり、全身的な3つのB症状（発熱、体重の減少、盗汗（顕著な寝汗）のほか、体のかゆみ、皮膚の発疹を伴う。さらに、腫瘤によって気道、血管、脊髄などが圧迫されると、気道閉塞、血流障害、麻痺などの症状が現われるので、緊急治療が必要になる。
悪性リンパ腫の診断・検査は、触診、血液検査、CT検査によって病変の部位を探求し、確定診断は、リンパ節を切り取っるリンパ節生検を行い、病理組織分類や遺伝子異常を調べる。
治療は、放射線治療、抗がん剤治療、造血幹細胞移植を単独、もしくは組み合わせる。悪性リンパ腫悪は、小児白血病、絨毛がんなどと同様に抗がん剤が効きやすい。抗がん剤は活発な細胞を攻撃することから、進行の早い高悪性度のがんに対して感受性が強く効きやすく、進行の遅い低悪性度のがんに対して感受性が弱く効きにくい（国立がん研究センターがん情報サービス）。
リンパ腫は全身に発生する。したがって、治療によってがん細胞が完全に消えたことを証明できないため、がんを検出できなくなった時点で完治ではなく、寛解と表現する。
つまり、骨髄中のがん細胞が５％を下回ったり、末梢血（血管を流れる血液）にがん細胞が検出されなくなった状態が寛解だ。がんが縮小して症状が改善された状態が部分寛解、がんの症状がなくなり、検査の数値も正常を示す状態が完全寛解になる。
寛解は、症状が一時的に軽減し、消えた状態だが、寛解しても、がん細胞が残存し、再発のリスクもある。治療後5年間、再発がなければ完治・治癒となるものの、寛解から7年以上も経ってから、がんが再発したり、治療部位と違う部位にがんを発症する場合もある。CHOP療法という標準治療の5年生存率は、およそ25%とされる。
CHOP療法は、3種類の抗がん剤（シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン）と副腎皮質ホルモン（プレドニゾロン）を組み合わせた化学治療だ。
さて、長々と悪性リンパ腫を見て来た。発生率は10万人に約10人だが、年々増加傾向にある。男女比は約3：2と男性に多い。発症のピークは60代～70代だが、ホジキンリンパ腫は、20代や壮年層も少なくない。俳優の高倉健さんも、声優の松来未祐さんも悪リンパ腫に命を奪われた。
報道に明示はないが、時天空（間垣親方）は、どのような病態だったのだろう？ 前途洋々たる青年の現役力士としての寿命のみならず、命までも奪っていった悪性リンパ腫――。その死は惜しんでも惜しみ切れない。
（文＝編集部）
