とくにフライドポテト、ポテトチップスは要注意
アクリルアミドは食品中でどのように生成されるのか? 食品原材料に含まれるアミノ酸の一種「アスパラギン」と、ブドウ糖などの還元糖が、加熱で反応してアクリルアミドを生成する。特にじゃがいもはアクリルアミドを生成しやすい。
だが、調理方法によってアクリルアミドの量には大きな差が出る。煮たり蒸したりした場合には、ほぼ生成されない。しかし、フライドポテトやポテトチップスのように油で揚げると、大量のアクリルアミドが生成される。
これは油が悪いわけではない。煮物蒸し物では食品の温度は100度程度までしか上がらないが、油を使うと150~180℃と非常に高温になる。それがアクリルアミド生成につながるのだ。
食生活で気をつけることは?
日本人への健康影響を検討していた内閣府食品安全委員会作業部会は、2016年2月16日、評価書案を委員会に提出した。その内容は、人の摂取量とがん発生との関連に一貫した傾向は見られず「健康影響は明確ではない」というものだ。しかし、「懸念がないとは言えない」という但し書きがつく。
日本人のアクリルアミド推定平均摂取量は、体重1キロ当たり1日0.24マイクログラムで、動物実験でがん発生の増加が懸念される量のおよそ1000分の1にしかならない。
だが、海外のリスク評価機関には、10000分の1より多い場合は低減対策が必要とするところがある。そのため、このように不明瞭な表現になったようだ。
これは従来のコーデックス委員会での評価ととくに変わらない。では、現実にはどう対処したらよいのだろうか?
実は食品中のアクリルアミドに規制値を設けている国はない。人類は長年高温加熱調理を行い、それと知らずにアクリルアミドを摂ってきたと考えられるからだ。だからこれまでの食生活を大幅に変える必要はない。だが同時に、摂取自体は少ないに越したことはない。これが現在の結論である。
調理での生成を抑えるには、以下のことを心がけるといい。
①不足がちな野菜・果物を多めに、さまざまな食品をバランスよくとる
②揚げ物や脂肪の多い食品を摂り過ぎない
③炭水化物の多い食品を焼いたり揚げたりする時は、必要以上に長時間、高温で加熱しない
④冷蔵庫で保存したじゃがいもは揚げ物などの高温加熱調理を避ける※5。もしくは冷蔵庫から出してしばらく放置し、常温に戻してから調理する
加熱調理は食中毒防止に有効なので、アクリルアミドを恐れるあまり加熱調理をしないのは得策ではない。毎日同じ食品ばかりといった偏った食生活でなければ、アクリルアミドをさほど気にする必要はない。バランスのよい食事をしていれば、自然にアクリルアミドの少ない食生活になるからだ。
(文=編集部)