3DS療法の専門外来を担当する山田秀則助教(左)
虫歯や歯周病の原因菌が、生活習慣病を引き起こす発症リスクになることがわかっているため、今後は虫歯や歯周病を直接治療するだけに留まらず、「予防歯科」の必要性がますます高まってくる。
歯科医の多くも「歯を治療するだけ」というアプローチではすまない時代になったことに気づいている。治療を受ける患者の方も健康に留意する人であればあるほど同様のイメージを共有している。
鶴見大学歯学部付属病院(神奈川県横浜市)では、3DSという治療法を用いて、歯科治療のみならず、全身疾患の予防を目的に画期的な専門外科を開設している。
口腔内には700菌種、10億個以上の雑菌
日本では成人の約8割が歯周病にかかっていると言われている。歯周病は、口の中に感染した歯周病菌が増殖することで起こり、放置しておくと歯を失うだけでなく、全身疾患の病気を引き起こす発症リスクになる。
歯周病の原因と生活習慣病の関係を、同大学歯学部・探索歯科講座の山田秀則助教は次のように語る。
「歯周病菌の多くは、酸素を苦手とする嫌気性菌で、バイオフィルムというバリアを張り巡らして、歯の周囲に定着します。それが歯垢となり、歯肉に炎症が起こるのが歯肉炎です。さらに進行すると歯と歯肉の隙間の歯周ポケットが深くなるのが、歯周炎です。歯周ポケットが深くなると、歯周病菌の絶好の住みかになります。炎症が歯の根元まで広がると、歯を支えている歯槽骨(しそうこつ)が溶けてしまい、その結果、歯を失うことになるのです」。
虫歯や歯周病は、一言で言えば「口の中にできた“傷口”」と山田助教。傷口から菌が全身にまき散らされることで、生活習慣病を引き起こされるのだという。
「口腔内には、700菌種、10億個以上の雑菌がいます。普段は悪さをしませんが、血流に乗って、全身に広がると菌血症となって、血管などに慢性炎症を引き起こし、全身疾患に悪影響を及ぼします」(山田教授)。
歯周病と関係がある主な病気のうち、2型糖尿病は、抵抗力が落ちるので歯周病になりやすい。逆に歯周病があるとインスリンの働きを悪くして、糖尿病を悪化させるという、悪循環を引き起こす。他に高血圧や動脈硬、心筋梗塞、脳卒中、肺炎、がん、認知症(アルツハイマー型)、関節リウマチ、内臓脂肪型肥満(メタボ)、妊婦の早産・低体重出産、誤嚥性肺炎などが挙げられる。