コンピュータの使用で30%のリスク低下!
Petersen氏らは、メイヨークリニック加齢研究に参加した「認知機能の正常な男女1900人超」を平均で4年間に渡って追跡調査した。研究開始時点の男女対象者の平均年齢は「77歳」であり、うち当該期間中に「450人超」が軽度認知障害(MCI)を発症している。
また、今回の研究は因果関係の証明をめざしたものではないが、特定の精神的な刺激となる活動を定期的に行なうと、記憶障害や思考障害のリスク低下が望まれることが判明した。
研究陣によれば、認知症やアルツハイマー病の遺伝的リスク因子である「アポリポ蛋白(APOE)E4」を有する人にも役立つそうだ。
今回の研究で試みられ、リスク低減の効果が読み取れた「精神的な刺激となる活動」の内容と割合は以下のとおりである。
▶︎コンピュータ使用により30%のリスク低下。
▶︎手工芸を行なうことで、28%のリスク低下。
▶︎社会活動に参加することで、23%のリスク低下。
▶︎ゲームを楽しむことで、22%のリスク低下。
70歳以上の人間がこれらの活動を週1~2回以上行なった場合、月2~3回以下の例に比べて記憶力や思考力の低下が少ないという傾向がみられた。
<作業>ではなく<楽しみながら>が大事
一方、新聞や本を定期的に読む活動レベルでは、記憶力や思考力については同様の「便益」が認められなかったというから、やはり「日常習慣+α」の活動を盛り込まないとリスク低下は期待できないということか。
また、前述の「アポリポ蛋白(APOE)E4」の遺伝子リスク因子を有する層に関しては、コンピュータ使用あるいは社会活動への参加という活動において、認知機能低下の幾分かの保護効果が読み取れた。
「脳に良いトレーニングには、問題を発見し、その問題解決のためにモノを動かすなどの、さまざまなレベルの知的刺激が必要とされる。しかしながら、これらの知的活動を毎日の決まった作業にしてしまっては意味がないし、あくまでも楽しみながら行なうことが肝要である」(Petersen氏)
漢字・ひらがな・カタカナを器用に使いこなす日本人の場合、脳トレの選択肢にもアドバンテージがありそうな気がするが、そのあたりはどうなのか……。
特に問題集を広げるまでもなく、計算ならば日々の買い物時に合計金額を脳内で弾いてみたり、財布と相談しながら小銭の使い道を思考する程度でも何もしないよりはいいようだ。ボケのリスク低減は細やかな喜びからだろう。
(文=編集部)