活かされない電通過労死事件の教訓~ 「残業月60時間以上は禁止」で形骸化する「36協定」

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そもそも「80時間」は過労死を防ぐギリギリの上限

 高橋まつりさんの過労死事件も担当している、弁護士の川人博氏の著書『過労自殺第二版』(岩波新書)にも以下のように書かれている。

 「過労死の事件で被災者の年間労働時間を調査すると、3000時間前後かそれ以上のケースがほとんどである。週休2日制の場合に祝祭日を考慮するとほぼ年間250日勤務であるが、その場合1日12時間労働を繰り返すことになる」

 「1ヶ月あたりに置き換えると250時間の労働だから、週休2日制で所定労働時間が8時間とすると、1ヶ月の時間外労働が80〜90時間前後となる」

 つまり、上限を80時間とするのはギリギリの過労死ラインを防いでいるだけで、労働と日常生活のバランスの取れた日々を健康的に送るためには、さらに上限を下げる必要があるという考え方がある。

法律通りの残業時間を守る企業はほとんど存在しない

 さらにもう一点、今回のニュースに関して、そもそもそのような取り決めがなされたとしても、実際に守られるのかどうかという懸念がある。というのも、現在でも労働基準法により、残業は原則として「月45時間、年360時間以内にするのがのぞましい」とされているからだ。

 しかし、労働基準法36条に基づく「36(さぶろく)協定」により、労使間で特別条項を付ければ時間制限を外すことができることになっており、「残業月45時間以内」という規定は事実上無効化されている。

 つまり、もともとの法律通りの残業時間を守っている企業はほとんど存在しないのだ。

 電通事件を受けて午後10時にオフィスを消灯することを決めた会社でも、結果的に社員の持ち帰り残業が常態化しているケースが明らかになっている。働く環境の改革には、雇う側と雇われる側、双方の意識改革が必要だ。はたしてそれが実現するのはいつのことになるだろうか。
(文=編集部)

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