まったく同じものを食べても時間だけで効果が違う
この方法は、“time-restricted feeding(食事時間制限法)”と呼ばれるもので、一定の時間内に食事をすませ、残りの時間は何も食べないことを指す。これまでの基礎研究から、この方法で体脂肪量が減少し、慢性疾患リスクが低減することが報告されている。
今回の研究で、同氏らは11人の成人男女を対象に、食事時間制限による影響を検討した。参加者の平均年齢は32歳で、平均BMIは30だった。
参加者には、午前8時から午後2時までの間に食事をする食事時間制限を4日間行ってもらい、続けて午前8時から午後8時までの間に食事をする通常の食事パターンを4日間続けてもらった。
食事は研究者の監視下で提供されたもののみとし、どちらの食事パターンもカロリー摂取量は同等に設定した。8時間ダイエットにくらべ2時間ほど食事時間が短く設定されている。
その結果、食事時間を制限すると、午前8時から午後8時までの食事パターンに比べて、全体的なカロリー消費量や脂肪燃焼量には差はみられなかったが、夜間のある一定時間における脂肪の燃焼量が増加していた。
同氏によると、これは食事時間の制限が炭水化物と脂肪の燃焼を交換する身体能力を高めることによるもので、“metabolic flexibility(代謝柔軟性)”と呼ばれる現象だとしている。
また、食事時間を制限している間、参加者に空腹の程度を尋ねると「空腹だ」と回答する率が低かった。この点について同氏は、日中の早い時間帯にカロリーを多く摂取すると、一般的な夕食の時間帯にはあまり空腹を感じないのだろうと推察している。
同氏によると、ヒトには体内時計が備わっており、代謝機能の多くは午前中にもっともよく働くという。この体内時計と同期して食事をとることが、脂肪燃焼にはよいことを同氏は指摘しているが、食事時間の制限が長期にわたる体重管理に有効かどうかは明らかではないとしている。
米ウィスコンシン大学名誉教授で、米国肥満学会のスポークスマンを務めるDale Schoeller氏(今回の研究には参加していない)は、食事時間の制限に関する研究はヒトを対象としたものはまだ始まったばかりで、今回の研究も小規模かつ短期間であるため、効果は長続きしない可能性もあると述べている。
注目される医療時間の考え方
最近では「時間医療」という分野が注目されいる。人間の体の体温や血圧、循環器機能や免疫機能、あるいは代謝などには一定のリズムがある。24時間を周期とした概日リズムが基本的によく知られているが、1週間、1カ月、1年などの周期もあると主張する研究者もいる。
この生体時計に合わせた投薬や治療が効果的だとする考え方だ。すでにこうした考えはすでに現実となっている。ぜんそくの発作は、夜間に起きやすいため、薬剤の血液濃度がこの時間帯にピークになるよう就寝前に服用するものがある。
動脈硬化の原因となるコレステロールは夜間に合成されることから、やはり夕食後に飲むことが多い。さらにある種の抗がん剤では副作用の少ない時間帯がわかっているために投与時間を調整する研究もある。
今回の研究で注目すべきは、夜間のある一定時間における脂肪の燃焼量が増加していたという点だ。今後ダイエット方法は、その効果的な時間との組み合わせが推奨されるような時代になるかも知れない。
(文=編集部)