あなたの性格を決めるのはゲノムか腸内細菌か?(shutterstock.com)
「無くて七癖。あって四十八癖」。「Every man has his faults.(誰でも欠点はある)」――。あまりにも自明だから、欠点だらけのわが身を嘆いても始まらない。「人の振り見てわが振り直せ!」を肝に銘じることくらいしかできないだろう。
ところが、こんな天の邪鬼にもひと筋の光が見えて来た。なんと性格を決める遺伝子(ヒトゲノム)が分かったというのだ。どんな研究だろう?
外向性はADHD、神経症傾向はうつ病、開放性は統合失調症や双極性障害と関係
カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループは、性格の主要な5因子とされる「外向性」「神経症傾向」「調和性」「勤勉性」「開放性」に対応するヒトゲノムの領域を特定し、学術誌『Nature Genetics』に発表した(WIRED NEWS 12月20日)。
研究によれば、これらの領域は、統合失調症、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、うつ病などの精神疾患の発症のしやすさと相関性が高かった。つまり、「外向性はADHD」、「神経症傾向はうつ病」、「開放性は統合失調症や双極性障害」と関連していたのだ。
この研究では、個人向けのゲノム解析サービスを提供する23andMeが保管する6万人の遺伝子サンプルと、ジェネティクス・オブ・パーソナリティー・コンソーシアムが提供した約8万人の遺伝子サンプルを包括的に分析したものだ。
その結果、先天性免疫系や神経系に関わる遺伝子をコードする「8p23.1」と呼ぶゲノム領域は、不安、抑うつ、情緒不安定などの神経症傾向と強い相関性があった。過去の研究で「8p23.1」は、がんや神経発達障害との関連も確認されている。
さらに、「12q23.3」というゲノム領域は、外向性と強い相関性があった。「12q23.3」は双極性障害との関連性が高く、性格や気質を調整する重要な役割を担っているらしい。
研究チームが相関係数を解析すると、神経症傾向とうつ病、外向性とADHDの高い遺伝的な相関性を確認できた。つまり、ADHDは外向性の変異型である可能性がある。
また、「L3MBTL2」と呼ぶ変異型の遺伝子は、神経症傾向、統合失調症の両方と相関していた。つまり、神経症傾向は、統合失調症と高い相関性があった。だが、勤勉性、学歴、学業成績との相関は見られなかった。
これらの分析の結果、性格特性と精神疾患は遺伝的影響を受けている事実が裏づけられた。ただし、研究チームは、研究対象となった遺伝子サンプル数が統計的に十分ではないと指摘し、今後も解明に努めるとしている。
ヒトゲノムを調べれば調べるほど、性格特性と神経疾患との関わりが明らかになった。その一方で、次のような興味深い研究もある。なんと、性格は「腸内細菌」が決めているというのだ。