連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」第16回

「がん対策基本法」は改正されたが……<ボランティア精神に依存>する本末転倒の「患者支援」

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患者の無償ボランティア精神に依存する異常

 がん患者の「こころの支援(がん患者の自立支援)」には2つの場面がある。ひとつは「がん患者の集まる場」、つまり医療機関内であり、もうひとつは「地域社会の中(医療機関の外)」での実践である。両者がうまく連動・連携してはじめて、効果的ながん患者の「こころの支援」が可能になる。

 前者は、医療機関での「患者サロン」であり、主に病院内で活動する患者会によって担われる「ピア・サポート」である。後者は、市町村におかれている市民センターや生涯学習センターなどで、「こころの支援プログラム」が実施される。

 こうした地域社会に根づいた患者サポートシステムの充実が求められ、地域社会(日常生活)の中で悩む多くのがん患者に幅広く支援プログラムが提供される。

 医療機関に出かけるよりずっとハードルが低い。場合によっては、自然豊かな遠隔地で滞在型プログラムが実践されることがある。たとえば、NPO法人ぴあサポートわかば会(愛知県)が遠隔地で実践する滞在型プログラムは集中的に学べるため、参加者のこころのケアに効果が高い。自然に触れることで気持ちが癒される効果が期待できる。
 
 患者仲間のため、病院のため、県のためにと、患者会スタッフがよかれと思って、<犠牲的精神で社会貢献>している現在の形だと、長期間にわたる継続が困難になってしまうだろう。

 がん患者支援が患者の無償ボランティア精神に依存する形は健常とはいえない。モチベーションを継続・発展させるにも、社会からの適切な評価としかるべき経済支援が求められる。

日本の患者は医療依存型の「甘え」がある

 欧米では患者の独立心が高く、「アドボカシー(権利擁護)」が感じられる。それを心理的・経済的に支える社会の仕組みも成熟している(必要性を理解し、寄付金が集まりやすい)。自己責任、義務、奉仕、その使い分けが明白で、自己表明も堂々としている。

 その点、日本はまだまだ発展途上だ。欧米の患者の自立心や自己責任の行動に比べると、日本の患者は医療依存型であり、あれしてこれしてもらって当然という「甘え」があることは否めない。

 やはり、患者の「ボランティア精神を利用」する、がん対策は、本末転倒である。医療機関も行政も、純粋に患者の役に立ちたいという、がん経験者のひたむきな無償の貢献に「依存している」のが現状に近い。

 「がん対策って誰がするの? 患者がするの?」と感じること自体おかしい。患者のための制度が前提要件のために、逆に患者側の金銭やマンパワーの持ち出しになっている現状を理解してほしい。

 医療側の都合でなく、もう少し患者側の視点に立った、患者が気持ちよくピア・サポートできる、そんな仕組みを構築できないものだろうか――。行政もそろそろ医療機関まかせの姿勢から脱却し、体験者である患者にしかできない、患者だからこそできるがん患者支援を理解し、本物の応援をしてほしい。

 ポイントの1つは、市町村単位での地道な活動・ピア・サポートとその支援体制だろう。市町村の担当者の理解を深め、本物の弱者支援への道を模索するための模範演技が求められる。

 そして、病院内で行われる患者支援を有機的に連携していく仕組みづくりが必須だ。障害者支援システムでの経験を生かすのが一番の近道かもしれない。

連載「病理医があかす、知っておきたい「医療のウラ側」」バックナンバー

堤寛(つつみ・ゆたか)

藤田保健衛生大学医学部第一病理学教授。慶應義塾大学医学部卒、同大学大学院(病理系)修了。東海大学医学部に21年間在籍し、2001年から現職。「患者さんに顔のみえる病理医」をモットーに、病理の立場から積極的に情報を発信。患者会NPO法人ぴあサポートわかば会とともに、がん患者の自立を支援。趣味はオーボエ演奏、日本病理医フィルハーモニー(JPP)団長。著書に『病理医があかす タチのいいがん』(双葉社)、『病院でもらう病気で死ぬな』(角川新書)、『父たちの大東亜戦争』(幻冬舎ルネッサンス)、『完全病理学各論(全12巻)』(学際企画)など。

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