「柔道」での死亡事故は日本だけ! 米国では「非接触型」の格闘技を提言

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格闘技にケガはつきものだが、死亡事故は絶対に避けたい(cowardlion / Shutterstock.com)

 12月29日と31日に、さいたまスーパーアリーナで開催され、大晦日にフジテレビ系で全国中継される格闘技イベント「RIZIN」。その対戦カードのひとつが波紋を呼んでいる。

 それは11月26日に記者発表された女子のワンマッチ。「女子最強ではなく、人類最強」と称される186cm・90kgのブラジル人柔術家のギャビ・ガルシアに、プロレスラーの神取忍が挑むというのだ。

 かつて「女子プロ最強の男」と呼ばれ、プロレスでは天龍源一郎とも闘った神取忍も今や52歳。試合は顔面への打撃やキックもOKの通常ルールで行われる。グローブを大きくしたり、試合時間を短くしたりはしない。

 ガルシアとの年齢差22歳、体重差は約25kg。神取本人の希望で実現させたというものの、危険な対戦ではないだろうか? 

 メディアからも「顔面を殴り合う、すなわち脳にダメージを与えることが可能なルールの闘いを、本人が望んでいるという理由でやらせるのは疑問」(Number Web 2016年12月4日)と懸念の声が上がっている。

テコンドーの「頭部キック」も禁止すべき

 プロの格闘家だけでなく一般の愛好家にとっても、格闘技には高い確率で怪我の危険がある。心身を鍛える目的で、子どもに早くから空手など格闘技を習わせる親もいるが、近年は未発達な子どもに対戦型の格闘技をさせる事に対して、警鐘を鳴らす専門家も多い。

 アメリカでは11月28日、「安全のために子どもは非接触型の武道だけを行うべきだ」という米国小児科学会(AAP)の報告が、『Pediatrics』(オンライン版)に掲載された。

 アメリカでは約650万人の子どもが、総合格闘技や空手、テコンドー、柔道などを習っている。これらの競技は、健康や運動技能、情緒的な発達を向上するメリットがあるが、半面ケガのリスクもある。

 そして格闘技によるケガは打撲や捻挫が大半を占めるが、もっと深刻なものもある。たとえば総合格闘技の練習では脳震盪、窒息、脊椎損傷、動脈破裂など、頭や頸部の外傷のリスクが高い。

 リスクの高い技は、頭部への直接打撃、床への頭部の打ちつけの繰り返しなどだ。怪我の発生率は格闘技の種類にもよるが、練習1000回あたり41~133件。さらにソフトヘルメットなどの防具が脳震盪から身を守るという証拠はなく、かえって安全だと勘違いされる可能性もある。

 著者であるAACスポーツ医学・フィットネス評議会のChris Koutures氏は、「子どもに習わせる格闘技はさまざまな種類があるが、非接触型のものと実戦型のものでは外傷リスクが異なる」と話す。そして、総合格闘技の大会や接触を伴う練習は、心身が十分に成熟するまで待ってから実施するよう勧めている。

 競技の安全性を高めるためには、ルールの見直しも視野に入れる必要がある。たとえばテコンドーのトーナメントでは、頭部へのキックにより追加点が入るルールがあるが、脳震盪リスクが高まるため廃止することを勧めている。

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