「焼け焦がれるような感覚がたまらない」
井川氏は、マカオやシンガポールのカジノで106億8000万円を使い、会社の金を不正に借り入れて2011年に逮捕され、懲役4年の実刑判決を受けた。同書のなかでギャンブルの恐ろしさをこう記している。
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カジノのテーブルについた瞬間、私の脳内には、アドレナリンとドーパミンが噴出する。勝ったときに高揚感もさることながら、負けたときの悔しさと、次の瞬間に湧き立ってくる「次は勝ってやる」という闘争感がまた妙な快楽を生む。だから、勝っても負けてもやめられないのだ。地獄の釜の蓋が開いた瀬戸際で味わう、ジリジリと焼け焦がれるような感覚がたまらない。このヒリヒリ感がギャンブルの本当の恐ろしさだと思う。
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精神疾患の診断基準であるDSM-5には「ギャンブル障害」という病名がある。その診断基準は、以下のようなものが掲げられている。
・興奮を得たいがために、掛け金の額を増やして賭博をする要求。
・賭博をするのを中断したり、または中止したりすると落ち着かなくなる、またはいらだつ。
・賭博をするのを制限する、減らす、または中止するなどの努力を繰り返し成功しなかったことがある。
・賭博のために、重要な人間関係、仕事、教育、または職業上の機会を危険にさらし、または失ったことがある。
ギャンブル依存のために失われた仕事、健康、家族、人間関係などの多くは、二度と取り戻すことができない。これ以上悲劇を増やさないためにも、安易なカジノの合法化にはストップをかけるべきだ。
(文=編集部)