人間以外の動物も「老眼」になるか?(shutterstock.com)
40歳過ぎて、読書をしていると、文字が読みにくく感じる。老眼の始まりである。眼鏡なしで自動車の運転をしているときに、夜になるにつれて視界が暗くなって看板の文字がぼやけて危険を感じた。これも老眼である。
人は自分が老眼であることを否応なく気づく瞬間がある。その経験が積み重なって眼鏡を買う、コンタクトレンズを調整するようになっていく。
人間以外の動物でも老眼はあるのだろうか?
野生のボノボ(ピグミーチンパンジー)も老眼に?
霊長類の一部には、加齢によって老眼のような症状が出るということが京都大学霊長類研究所のヒュンジン・リュー(Heungjin Ryu)らの研究で明らかになった(Current Biology 2016-11-7)。
その研究によると、群れのなかで毛繕いをしている野生のボノボ(ピグミーチンパンジー)の動きを観察したところ、高齢になるほど腕を目から離すように伸ばしていた。
リューによると「野生のボノボは40歳前後で遠視の症状を示すことがわかった」という。これは、現代社会に生きる私たち人間とよく似ていると分析した。
野生の霊長類に視力検査をしたり、眼鏡をかけさせることは難しい。しかし、群れを観察するだけでその視力の低下が判明できる。
これはどういうことだろうか?
熱帯雨林という環境は、生い茂った樹木のなかに食べ物があり、木陰で強い日光を防ぐことができる。人間と同じように、ボノボも老眼になっていると仮定すると、暗いところでは視力が低下しているため、外敵から身を守るのが遅れる可能性がある。食べられる食物を選ぶための判断能力が低下するかもしれない。弱肉強食の自然環境で生き抜くことは困難になっていくだろう。