インタビュー「薬物依存は慢性疾患である」第3回:松本俊彦(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存研究部部長)

薬物依存で<人里離れた施設に隔離>は古い?~街中でも治療可能な「SMARPP=スマープ」

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<人里離れた施設に隔離>しなくても治療可能なプログラム

――松本先生は「SMARPP(スマープ)」という、薬物依存症患者の治療プログラムを開発したそうですが、これはどのようなものなのでしょうか?

 SMARPPの原型は、アメリカの西海岸で行なわれている覚せい剤やコカインの依存症の外来治療プログラムです。これを日本流にアレンジしたのが、私たちが使用しているSMARPPです。

 SMARPPの特徴は、マニュアルとワークブックに基づいたプログラムであるということです。

 ワークブックには、薬物の害に関する知識や、どのようなときに使いたくなるか、使いたくなったときにはどのようにすればよいかといった、「認知行動療法」的な、再乱用を防ぐためのスキルも取り上げられています。

 ワークブックを一緒に読み合わせることで進めていくので、医師ではなく、薬物依存症患者を援助した経験の乏しい医療従事者でも、一定のトレーニングを受ければプログラムを提供できるようになります。

 これまでのように人里離れた施設に隔離しなくても、街中の医療機関で行えるのも特徴です。

――このプログラムを受けることでクスリをやめられるようになりますか。

 SMARPPは現在、1週間1セッション、24セッションを1クールとして行っています。プログラムの効果については、以前に行っていた16セッションのデータしかありませんが、終了から1年後の状況を調査した結果、1回でも参加した人で前よりも改善した人は7割、一度もクスリ手を出さなかった人は4割でした。

 なかにはずっと断薬を続けて、ダルクなどの民間リハビリ施設のスタッフになった人もいます。

 特に注目すべき点は、従来の治療法に比べるとSMARPPは治療継続性が高いことです。依存症は<慢性疾患>ですから、治療は長丁場になります。

 そのためには、長く治療機関とつながることが必要です。そうすることで、ほかの社会資源ともつながりやすくなり、患者の社会的孤立を防ぐこともできます。

 また、SMARPPに参加する過程で、ダルクや自助グループなどの、他の社会資源を利用するようになる人も少なくありません。たくさんの支援機関や援助者ともつながるようになります。

 つまり、このプログラムは援助者と「より長く、より広く」つながることを助ける効果があるのです。

――治療プログラムを受けた後、<ずっと覚せい剤から離れる>には何が大切ですか。

 「早く仕事をして社会復帰を」という人もいますが、頑張って仕事をしてお金が手に入ると、それでクスリを買いたくなる人は少なくない。いきなり目一杯、仕事をするよりも、まずはリハビリ中心の生活を心がけてほしい。

 もちろん、出口が見えないままプログラムを続けても、希望がなくなっていきます。いずれは仕事とリハビリを並行しながら、地域で生活できるようになることが目標です。

 ただし、覚せい剤で服役すると、出所後になかなか仕事は見つかりにくいですよね。だから、薬物で罰せられた人を社会から排除するのではなく、社会の側も彼らが再び普通の生活に戻れるように受け入れることが大事なんです。

 社会生活のなかで<薬をやめ続ける>ためのサポートが、一番の治療法だと思っています。
(取材・文=里中高志・ライター/精神保健福祉士)


松本俊彦(まつもと・としひこ)
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長。1993年、佐賀医科大学医学部卒業後、神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学医学部附属病院精神科などを経て、2015年より現職。日本アルコール・薬物医学会理事、日本精神科救急学会理事、日本青年期精神療法学会理事。著書に『薬物依存の理解と援助』(金剛出版、2005)、『自傷行為の理解と援助』(日本評論社、2009)、『自分を傷つけずにいられない』(講談社、2015)、『よくわかるSMARPP─あなたにもできる薬物依存者支援』(金剛出版、2016)などがある。

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