孤独の原因は遺伝か環境か?(shutterstock.com)
今年の七夕の日に亡くなられた永六輔さん。彼が作詞した「上を向いて歩こう」は国民的流行歌のひとつだが、いまだに歌詞の一部を「♪一人ぼっちの夜」と覚えて歌う人があとを絶たない。あれは「♪一人ぽっちの夜」なので、以後ご注意を。
もっとも近年は「クリぼっち(ひとりクリスマス)」に象徴される如く、「ぼっち」が隆盛しているが、英語の「loneliness」と「solitude」ほどの違いは曖昧にして見いだしがたい。
ちなみに、ドイツの神学者パウル・ティリッヒは「言語は一人でいることの寂しさを表すために『loneliness』という言葉を作った。さらに言語は、一人でいることの喜びを表すために『solitude』という言葉を作った」と言っている。
日本語でも「孤高」と「孤独」は大いに意味が異なるが、今回紹介するのは後者に関する最新の解析報告である。なんでも、生涯にわたって「孤独を感じやすい」という人の場合、少なくともその原因の一部は遺伝子に左右されている可能性があるらしいという話題だ。
そんな解析成果を論文して公表したのは、米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のAbraham Palmer氏らの研究グループである。米国立衛生研究所(NIH)が一部の資金を提供して行なわれた今回の研究の結果は、『Neuropsychopharmacology』(オンライン版・9月15日付)で掲載された。
生涯にわたり<孤独を感じる人>の14~27%に遺伝的影響
大規模解析に際しては「健康と退職および加齢」に関連する諸問題に着目した米国立加齢研究所(NIA)の協力のもと、50歳以上の男女1万1000人を対象に行われた。
被験者を50歳以上の男女としたのは、Palmer氏らが「一時的な孤独感」ではなく、「生涯にわたる孤独感」の原因究明に着目し、解析に挑んだからに他ならない。
まずは全被験者に対し、「他人との交流がないと感じる頻度はどれくらいか?」「自分が仲間外れにされていると感じる頻度のほうはどうか?」、さらに「他者から孤立していると感じる頻度についてはいかがか?」などの基本的な質問を投げかけた。次いで、各回答者の遺伝的背景がつぶさに検討された。
その解析の結果、生涯にわたり孤独を感じるという傾向層のうち、どう見積もっても14~27%の割合で「遺伝的形質による影響の可能性」が読み取れたそうだ。
「家族構成(人数)が同じ親しい友人同士がいたとして、片方は自身が適切な社会的関係を築けていると感じている。しかし、もう一人の友人のほうは必ずしもそうではない場合がある。『孤独感の遺伝的素因』があるというのは、そういう意味合いである」(palmer氏らの論文から)
彼らの研究によれば、そうした孤独感は慢性的な神経症や抑うつを伴なう傾向が認められたという。