「吸う人はチョット…」の先入観を霧散できるか?
だとしても、その有害性/安全性をめぐる「残り5%」という微妙な見解の相違については、今後の受け止め方にも国民性の違いが出てくるような気もする。
たとえば、日本の最近の消臭剤CMで、東幹久さん扮するアッシー氏の誘いに喜びつつ、クルマに乗りかけた美女(=菜々緒さん)が「タバコの臭いはチョット……」と躊躇する場面がある。
いかに「煙も灰も臭いも出ない」が売る側のうたい文句でも、こうした「吸う人はチョット……」という(誤った!?)先入観から電子タバコが脱せられるかどうか。
ネット投稿をみると、新幹線車内で愛蒸家を発見して呆れた女性乗客が車掌を呼んで注意してもらおうと考え、念のために「電子タバコの分煙問題」についてネットで検索。結果、あまりにもグレーゾーンである現状が判って行動を躊躇したという逸話が出ている。
実際、いわゆる路上喫煙禁止条例上の電子タバコの扱いに関しても、解釈は自治体ごとにさまざまだ。大阪市や名古屋市は「やけどの恐れがない」などの理由から罰則対象外としているが、東京・千代田区や横浜市では紙タバコ同様に禁止対象とされている。
前出のProchaska氏らも論文中で、「既存研究の範疇では、電子タバコが禁煙に役立つという知見はいまだ示されていない。従来のタバコと比べた際の電子タバコの安全性についてはわれわれも今後さらに調べていきたいと考えている」と述べている。
論文の共著者のひとりも「たとえ、電子タバコにリスクの可能性があるとしても、患者に対しては断定的な言い方を避けて話すべきかもしれない」と、やりとり上の慎重論を提案している。
専門家でさえ明確な答えに窮している電子タバコの有害性/安全性の問題。2020年の東京五輪までには、世界標準の「正解」が出るのだろうか。日本のおもてなしが左右される重要な問いである。
(文=編集部)