成人後の喘息は心筋梗塞・脳卒中・心不全・狭心症・心臓関連死のリスクが57%高い
この研究は、米ウィスコンシン大学の内科助教授であるMatthew Tattersall氏らによって行われ、『Journal of the American Heart Association』(8月24日・オンライン版)にその成果が掲載された。
この知見は、成人約1300人(平均年齢47歳)を対象とし、その健康状態を14年間追跡した研究によるものだ。いずれの被験者も研究開始時点で心疾患はなく、111人が成人後に喘息と診断されており(遅発性喘息)、55人が小児期に喘息の診断を受けていた(早発性喘息)。
その結果、遅発性喘息患者は、早発性喘息患者および喘息でない人に比べて、心筋梗塞・脳卒中・心不全・狭心症・心臓関連死のリスクが57%高いことがわかった。
Tattersall氏は、この知見に基づき「医師は、遅発性喘息患者の高血圧や脂質異常を注意深く監視し、危険因子を積極的に改善する必要がある」と述べている。
そして、同氏は、喘息は人により大きく異なることがあると説明する。
「あまり認識されていないが、喘息にはいくつかの種類があり、それぞれに固有の特徴がある。今回の研究で着目した遅発性喘息は、小児期に発症する喘息に比べて重症で、薬剤によるコントロールが困難である傾向がみられる」
さらに、遅発性喘息はさまざまな因子(大気汚染など)に起因するものが多く、肺機能が急速に低下することも多いという。
米ノースウェル・ヘルス・プレインビュー病院(ニューヨーク州)呼吸器内科のAlan Mensch氏は、「これは観察的研究であるため、一方の状態が他方を引き起こしたという意味ではない」と強調。
「両方の状態に共通する経路があることが示唆される。この関連性の原因をさらに詳しく調べれば、今後の治療のヒントが得られる可能性がある」とコメントしている。
また、米レノックス・ヒル病院(ニューヨーク市)のLen Horovitz氏は、「共通の危険因子が肺と心臓の健康状態を結びつけている可能性がある。考えられる説明のひとつは、大気汚染であり、女性のアテローム性動脈硬化との関連が示されている」と話す。
一方で、遅発性喘息の成人は運動、健康的な食事、正常体重の維持によってリスクを低減できるとアドバイスしている。
<喘息の気>がある人が避けたい習慣や環境
現在、小児喘息にかかっていた人が大人になって再発するケースに加え、初めて喘息を発症する大人も増えている。
平成16~18年度の厚生労働科学研究事業研究班による全国調査では、成人(20~44歳)での期間有症率が9.4%、喘息有病率が5.4%と報告。
喘息の発症・増悪に関わる因子は、遺伝子やアレルギーの素因、気道過敏性などだ。
環境因子のなかでも増悪させるものとして、①アレルゲン、②大気汚染[屋外・屋内]、③呼吸器感染症、④運動ならびに過換気、⑤喫煙、⑥気象、⑦食品・食品添加物、⑧薬物、⑨激しい感情表現とストレス、⑩刺激物質[煙、臭気、水蒸気など]、⑪二酸化硫黄、⑫月経、⑬妊娠、⑭肥満、⑮アルコール、⑯過労などが挙げられている。
紅音ほたるさんの喘息悪化は、喫煙やアルコールの摂取が引金となったのかもしれない。<喘息の気>がある人は、これらの習慣や環境を避けることを心がけたい。
(文=編集部)