シリーズ「オルガスムのサイエンス 性的快楽と心身と脳の神秘を探る!」後編

強力なオルガスムを求めて高知東生、押尾学、ASKAが陥った<ドラッグセックス> で勃起不全に!?

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多くのタレントがはまったドラッグとオルガスムの関係は?

 日本をはじめ世界各国が規制しているものの、独特の多幸感が得られることから若者らに浸透し社会問題化しているレクリエーション・ドラッグ、それがMDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン )だ。2009年に押尾学、2014年にASKAが所持して逮捕された。

 エクスタシーの名で知られるMDMAと、オルガスムの関係を分析した共同研究がある。

 2001年、性科学研究者のZemishlany、Aizenberg、Weizmanらは、『オルガスムとMDMAの疫学的研究』を発表した。米国の成人男女を対象に行った疫学調査によれば、MDMAを使用した男女のおよそ90%以上が「性欲が強まった」「オルガスムを強く深く感じた」と回答。

 一方、男性のおよそ40%は「勃起が弱まった」と回答している。さらにMDMAは、記憶障害を引き起こすという研究もある。

 電子版『Addiction』誌(2012年7月)によれば、独ケルン大学のDaniel Wagnerらの研究グループは、1年間にわたってMDMAの使用経験のない149人を対象に、MDMAの使用前後の認知機能の変化を調べた。

 その結果、MDMAを使用したグループと、使用していないグループとの間で短期記憶の低下の有意な差が認められた。つまり、MDMAは記憶障害と相関関係が強い。

 マリファナやMDMAよりポピュラーなドラッグといえば、ポッパーズ(亜硝酸アミル)かもしれない。狭心症の痛みを緩和する亜硝酸アミルは、生殖器周辺の血管を拡張し、血流を促すため、勃起力が強まり、オルガスムが高まるとされる。

 だが、吸引しすぎれば、血圧が急降下するため、吸引時はシルデナフィル(バイアグラ)を併用してはいけない。

 さらに食欲抑制をはじめ、ADHD(注意欠陥・多動性障害)やナコプレシー(居眠り病)の治療に使われる精神刺激薬のアンフェタミンはどうだろう?

 米国の性科学者のMiller、Gold、Kallらの研究(1992年)によれば、アンフェタミンは、神経伝達物質のドーパミンの分泌を促すため、オルガスムが高まる傾向が強い。しかし、常用すれば中毒化するため、性機能不全、無オルガスム症、妄想型統合失調症などにつながる恐れがある。

 このようにドラッグにはオルガスムを促す作用はあるものの、依存性が強く、勃起不全、無オルガスム症などの性機能不全につながるすリスクがきわめて高い。

 巷を賑わす覚醒セックス、ドラッグセックスなどの謳い文句に惑わされてはいけない。違法で有害なドラッグには絶対に手を染めないでほしい。

*参考文献/『オルガスムの科学』、『女と男 最新科学が解き明かす性の謎』ほか


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。

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