レゴ“3割が武器入り” 知育玩具が年々「暴力化」しているワケとは?

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 デンマーク発のレゴといえば世界一有名なブロック玩具。創造力と知的好奇心を刺激する多彩なバリエーションは、大人さえも魅了する。

 「積極的に子どもに与えたいオモチャは?」と問われたら、そのひとつにレゴを挙げる親は多いだろう。

 知育玩具のイメージの強いレゴだが、最近気がかりな指摘があった。米オンライン科学誌『PLOS ONE』に発表された、ニュージーランド・カンタベリー大学のクリストフ・バートネック氏による研究だ。

 それによると、近年レゴのセットに含まれる武器が増え、暴力的な内容になっているというのだ。

1980年以降、急に増えた「武器パーツ」

 レゴが、プラスチック製のブロック玩具の製造を始めたのは1949年。シリーズに初めて武器が登場したのは1978年だ。それは「城作りセット」の中に含まれていた剣、斧、槍だった。1989年には初めて銃が登場した。

 今回の研究では、次の2点について調査した。

 ①レゴのセット製品に武器(剣、銃、大砲、ライトセイバーなど)のパーツが含まれている割合。
 ②レゴ製品のカタログに、暴力的な要素が含まれている割合。

 それによると、1980年以前はセット製品に武器のパーツが1つ以上含まれている割合は数%にすぎなかった。

 しかし、年を追うごとに増加。2001年にはいったん5%以下まで減ったものの、再び増えて、2015年には武器を1個以上含むセットが全体の3割に達したという。年間の増加率は平均7.6%にもなる。

 カタログの画像については、2010~2015年で40%に暴力的な描写があると指摘された。1978年に武器が初登場からの増加率をみると、カタログの暴力的な要素は毎年19%ずつ増えていたという。

 レゴのパーツに武器が増えるのは、テーマとなる作品に暴力的なものが増えていると考えることもできる。バートネック氏は、「レゴ社の製品は、以前ほど無邪気ではなくなった。暴力的要素は、単に遊びを面白くするという度合いを越えているように見える」と述べている。

現実社会の紛争やテロを反映?

 そこには、国際的な紛争や対立の激化という現実が反映されているのではないかという見方もある。

 国際平和研究所(SIPRI)が発表する国際的な武器移動のデータによると、主要な武器の移動量は2004年以降増え続け、「2006~2010年」と「2011~2015年」で各14%アップしている。

 2008年には、レゴに武器を提供していたカスタムパーツメーカーが、イスラム教団体やユダヤ系組織から「テロを賞賛するものだ」「国際的な緊張が高まっている時代にふさわしくない」と批判を受けたことが報じられた。

 確かに子どもが、同社で扱っていたタリバン風フィギュアや、ナチスの親衛隊風フィギュアで遊んでいたらギョッとする。「戦争に関わるオモチャで遊ばせると、ものごとを暴力的な手段で解決しようとする人間になるのでは?」と、大人が恐れるのもごく自然なことだ。

 では、子どものオモチャから暴力的なものを一切排除し、戦争ごっこを禁じることが親の務めなのだろうか?

子どもには戦争や死の疑似体験が必要

 「親は、自分の価値観が反映されたオモチャを買い与えたいと思うと同時に、子どもに意思決定の機会を与えたいという、相反した願望を抱いている」

 「小さな兵士、子どもの戦争ごっこを考える」というレポートで、世の親たちの矛盾を指摘するのは、米アリゾナ州立大学で教育学を専門とするロバート・D・ストローム教授だ。

 同教授は、子どもが遊びを通じて学ぶ意味を次のように示す。

 「戦争ごっこは怒りや恐怖、欲求不満、嫉妬心といったマイナスの感情を気兼ねなく表に出せる機会を作ってくれる」「戦争や死、ケガといった恐ろしい問題に何度も遭遇する機会をも与える」と言い、さらにこう加えた。

 「親は子どもの玩具を選んだり、子どもが抱く想像の世界を検閲したりすることで自分の価値観を示すのではない」「“ごっこ遊び”に参加し、その価値観に沿った役割を演じることで示すべきだ。価値観の押し付けは、身をもって示す価値観に比べ、訴える力は非常に弱い」

 先の論文でレゴの暴力化を懸念したバートネック氏も「武器の数はあくまでも研究の一環であり、子どもの暴力に直結するわけではない」との見方を示している。

 子どもの心の成長は与えるオモチャが決めるものではない。遊びの世界に親がいかに介在して価値観を示すかは、いつの時代でも重要である。

 参考:CHILD REASACH NET ABMレポート「小さな兵士、子どもの戦争ごっこを考える」
(文=編集部)

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