硬水は乳児のアトピー性皮膚炎のリスクを高める!?(shutterstock.com)
最近、巷では「○○に効く△△水」なる商品が注目されている。その効果については、有名芸能人や医学博士の肯定コメントが添えられているものの、「怪しい」「エセ科学」「ただの水」といった批判の声は多い。昔から「なんとか水」ビジネスは存在したが、さまざまにカタチを変えていまに至る。
この「なんとか水」、決定的な治療法がない疾患がある人や、何らかの不調を感じている人にとっては、時として“魔法の水”と錯覚することさえある。
悪徳商法「アトピービジネス」が社会問題になったのも、アトピー性皮膚炎になる原因には諸説があり、解明されていないことが大きい。日本にはアトピー性皮膚炎の詳細な統計調査がないため、患者がどのくらいいるのかははっきりしない。
厚生労働省の患者調査(2011年)から推計すると、アトピー性皮膚炎の患者は約370万人といわれており、「国民の約1割がアトピー性皮膚炎に罹患していると考えられる」(厚生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対策委員会「リウマチ・アレルギー対策委員会 報告書」平成23年8月)という。
ご多分に漏れず、アトピーも水ビジネスのターゲットになりやすい。だが今回は、アトピーと水の関係について、興味深いひとつの研究が報告された。硬度の高いミネラル水は乳児のアトピー性皮膚炎のリスクを高める可能性があるというものだ。
硬水の地域ではアトピーになる可能性が最大87%アップ
報告したのは英キングス・カレッジ・ロンドン皮膚科学研究所の Carsten Flohr氏らで、『Journal of Allergy and Clinical Immunology』(4月28日・オンライン版)に掲載された。
この研究では、全英の生後3カ月の乳児1303人を対象として、乳児が住んでいる場所の上水道の硬度(水のミネラル含有量)および塩素濃度を調査した。その結果、硬水の地域に住む乳児では、アトピー性皮膚炎となる可能性が最大87%上昇していた。
これまでの研究では、水の硬度と就学児童のアトピー性皮膚炎リスクの関連性が示されているが、乳児での関連性を検討した研究はこれが初めてという。
同氏によると、今回の研究は、硬水への曝露(さらされること)と小児期のアトピー性皮膚炎の発症リスクとの関連性に関するエビデンスが増えてきていることから実施されたという。
ただし、「因果関係を証明する研究形式ではなかった。関連性の解明には、さらに研究が必要だ」とコメント。そこでFlohr氏らは、次のようなフィージビリティ(実現可能性)試験を始める予定だという。
アトピー性皮膚炎の発症が高リスクの小児でも、生まれたときから自宅に硬水を軟水化する機器を設置すればリスクが低減するのか、また、塩素濃度を低下させればさらにリスク減が得られるかという評価である。