シリーズ「病名だけが知っている脳科学の謎と不思議」第7回

サヴァン症候群の超絶記憶力は障害か才能か? 人の「脳」に眠っている驚異の潜在能力

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
5236-2.jpg

サヴァン症候群には驚異の記憶力を持つ人も(shutterstock.com)

 9000冊の本の内容をすべて覚える。モーツァルトの曲をいちど聞いただけで完璧に弾ける。数十年後の何月何日は何曜日かを言い当てる。際限もなくひたすら詩を書く。1日19時間も絵を描き続ける。数カ国語を自由に読み書き話す……。

 サヴァン症候群は、人知を遥かに超えた卓抜した才分を持ちながらも、QOL(生活の質)やADL(日常生活自立度)が著しく阻害されるのが特徴だ。

 日本人のサヴァン症候群といえば、漂流画家の山下清が有名だ。見た景観や印象をそのまま映像として記録するカメラ・アイの能力があったため、旅先の記憶を障害者施設や実家に持ち帰り、絵を描き起こした。また、2012年にTBS系でオンエアされた『ATARU』はサヴァン症候群がテーマのドラマ。中居正広さん扮するチョコザイ君こと猪口在(あたる)は、サヴァン症候群の特殊な嗅覚と鑑識眼で犯罪事件を次々と解決した。

語源はイディオ・サヴァン(賢い白痴)

 その発見は、1887年、イギリスのロンドン――。眼科医ジョン・ランドン・ダウンの診察室に、ある患者が訪れた。名を仮にジョーンズとしよう。ジョーンズは年齢不詳で、トラホームか白内障か飛蚊症か、愁訴も不明だ。

 しかし、ダウン医師は度胆を抜かれる。驚いたことに、何冊もの書籍をいちど読むだけですべてを覚える。さらに驚いたことに、何と逆からも読み上げる。ジョーンズは並外れた天賦の神業を持って生まれのだ。

 ダウン医師は、ジョーンズの奇才はイディオ・サヴァン(idiot savant=賢い白痴)ではないかと考える。フランス語で、イディオは「白痴」、サヴァンは「賢い」の意味だ。だが、「白痴」が差別的なニュアンスを臭わせるため、ダウン医師はサヴァン症候群と命名した。

がんになってもあきらめない妊活・卵巣凍結 費用は卵巣摘出に約60万円、保管は年間10万円
インタビュー「がんでも妊娠をあきらめない・卵巣凍結」後編・京野廣一医師

がん患者への抗がん剤による化学療法は妊孕性(妊娠のしやすさ)を低下させる。がんにより妊娠が難しくなる患者を支援するため、2016年4月に「医療法人社団レディースクリニック京野」が、治療前に卵巣を凍結して保存しておく「HOPE(日本卵巣組織凍結保存センター)」を設立すると発表した――。医療法人社団レディースクリニック京野理事長の京野廣一医師に卵巣凍結の仕組みについて訊いた。
前編『「がん」になっても妊娠・出産をあきらめたくない女性のための「卵巣凍結」とは?』

大阪市内のクリニック勤務。1987年 産業医科大…

吉田尚弘

小笠原クリニック札幌病院腎臓内科。日本中毒学会認…

横山隆

シカゴ大学医学部内科・外科教授兼個別化医療センタ…

中村祐輔